雪に閉ざされた場所でひっそりと。
何の脅威も無く過ごしていた。
親と兄弟に見守られ。

ただ違うと言えば、色が違う事くらいで。

気が付けば其処は見知らぬ場所で。
見知らぬ者たちに囲まれて。
其れでも幸せに過ごしています。



ムナと愉快な仲間たち
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ムナは途方に暮れていた。 初めてお使いを頼まれて。 たった一人でのお使いを頼まれて。 おっかなびっくり承諾して来たは良いものの。 一体此処は何処だろう・・・ ムナは途方に暮れていた。 初めてのお使いで。 一人きりのお使いで。 彼は今、所謂迷子になっていた。 「うわぉ☆やっぱり迷子になっちゃったヨ!」 「大丈夫かな、ムナ〜」 「・・・・・・てかさ、絶対怪しいと思うんだけど、俺ら」 「でもムナの事、心配でしょ?だったら良いじゃん!」 そんなムナを見守る4人。 電信柱(あるのか?)に身を隠し、ムナの一挙動に目を見張る。 実はムナはファンクラブがあるほどの人気なのである。 彼らは其の会員。 中でも『ムナを守り隊』という部隊まで発足させてしまった者たちである。 ムナは自分にファンクラブがあるなど思いもしない。 しかも其の本部が自分の実家で、会長が里長であることも。 彼は生来の性格から人見知りが激しく、内向的で引っ込み思案である。 そのくせ小さいのでいつも上目遣いになるし、眉間に皺を寄せてハの字眉毛。 部屋に居る時もいつも隅っこで体育座り。 気を引きたくて手を伸ばすけど勇気が無くて、掴んでしまうのは自分の服か帽子。 彼にとってはなんて事の無い自分である。 が、しかし。 如何やら其れが大勢のツボに嵌ってしまったらしい。 兎に角ムナにはファンが多いのだ。 そんなムナが生まれて初めて一人でお使いに出かけたのである。 買いに行くものは『きずぐすり・インドメタシン・プロテイン』。 ムナは途方に暮れていた。 本当に。 都会は人が多いとは聞いていたが、此れほどとは。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・拙者・・・挫けそう、です・・・」 この際、人見知りが如何のではない。 氷タイプのムナにとって、この場所はとても暑いのだ。 其れこそ溶けてしまいそうなくらいに。 「で、でも・・・お使いを引き受けたからにはやらなくちゃ・・・」 ムナは小さな拳を握り締めて歩き出した。 途端、人にぶつかった。 「うわっ」 「ひゃあっ!」 相手はドサリと、ムナはコロリと転がった。 「ごっ・・・御免なさい・・・!拙者、前を見ていなくて・・・」 「いやいや、こっちこそ。大丈夫か?」 相手はそう言うと、ムナに向かって手を差し出した。 ムナは其れにビックリしながらも、おずおずと手を掴んだ。 (電信柱の影) 「あぁ〜!!あいつちゃっかりムナの手を掴んでる!!」 「ずるいずるいずるい〜!俺だって掴みたい〜!」 「俺は掴んだことあるんだ〜♪良いだろ〜」 「ウソ!」 「マジで?」 「へへ〜ん♪」 「・・・・・・お前らな・・・」 そんな会話が電信柱の影で行われているなど露知らず。 相手に立ち上がらせて貰ったムナは素直に御礼をした。 「あ、あの・・・ありがとうございます・・・です」 「良いって良いって。気にするなよ」 相手はにっこり笑ってムナの頭を撫でた。 (電信柱の影) 「あぁ〜!あいつ頭撫でてるよ!!」 「ずるいずるいずるい〜!俺も撫でたい〜!!」 「流石に其処まではしてないなぁ」 「でも、やってみたいでしょ?」 「でしょ?でしょ?」 「勿論!」 「・・・・・・・・・即答かよ・・・」 矢張りそんな会話が電信柱の影で行われているなど露知らず。 ムナは見ず知らずの相手と仲良くお喋りを始めた。 「お前、買い物に行くのか?」 「え?あ・・・は、はい。お使い・・・です」 「ふぅ〜ん。手伝おうか?」 「え?そ、そんな・・・!わ、悪い・・・です・・・」 ムナは其の申し出にビックリするも、慌てて断った。 挫けそうになったが、一応、ムナは一人でお使いに来たのだから。 「良いって、気にすんなよ。ぶつかっちゃったしな。そうそう、俺はユゼ。お前は?」 しかし、そんなムナの胸中などお構いなしに相手――ユゼはムナに名を尋ねた。 ムナは矢張りビックリするも、オズオズとポツリと呟いた。 「・・・・・・拙者は・・・ムナ・・・です」 「ムナね。よっしゃ、ムナ、行こうぜ!」 「ひゃあっ!」 ムナが返事を返すより速く、ユゼはムナの手を掴んで走り去ってしまった。 軽いムナは宙をピョコピョコ舞っていた。 (電信柱の影) 「買hドドドドドロボー!!!」 「いや、泥棒じゃなくて誘拐じゃねぇの?此れって」 「トキ、チンタラしてないで、持ち前のスピードでムナを取り返してきなよ!」 「俺が?ギンがやれば良いじゃんかぁ〜」 「んもぅ☆んじゃあ、多数決でコクに決定!!」 「一寸待てや、コラァ!!何で俺に決まってんだよ、ユギ!!」 「多数決☆」 「ホラ、さっさと行こうよ、みんな」 「トキったら何気にギンにおんぶさせてるね☆天晴れだゾ!」 かくして。『ムナを守り隊』改め、『ムナを取り戻し隊(今回限り)』が発足した。 トキをおぶったギンが猛スピードでユゼが走り去った方角へ走る。 「トキ、射程距離に入ったら投げるよ。良い?」 「おっけ〜!つか、もっとスピード出るんじゃねぇの?」 「お前と一緒にするなよな〜!此れが限界だっつの!」 ああだこうだと言い合っている内に射程距離に入った。 「よっしゃ、行くぞ!」 「任せな〜!」 勢い良く、ギンはトキをユゼに向かって投げた。 走行速度と投射速度、更に自身のスピードを合わせて、トキは猛烈なスピードを発揮した。 「アハハハハ!!やっぱ、こうでなくっちゃなぁ!!」 スピード狂なトキは、久しぶりの高速ですっかり上機嫌だ。 「お、居た居た」 うっかり目的を忘れるところだったが、運良く前方にユゼを発見した。 背後のナノスライサーを展開させ、気流を変えながらトキはユゼに突進した。 「少しはムナの歩く速度に合わせろよ、この桃マン野郎!!」 「うわっ!」 「ひゃあっ!」 一瞬の早業で、時はユゼの手からムナを取り返した。 着地した時、何故かムナの姿勢は万歳だった。 「え・・・えと・・・・・・ト、トキさん・・・?」 何が起きたのかサッパリ理解出来ていないムナは、チラリとトキの方を振り返った。 「ムナの手伝いをしてくれるのは良いけどさ、ちゃんとムナを歩く速さに合わせろよ!」 そんなムナを綺麗にスルーして、トキはユゼに向かって怒鳴った。 「は?あ、そっか。悪い悪い。うっかり自分のペースで走っちまったぜ」 「分かってくれれば良いよぉ」 ユゼの様子にトキはニッコリ笑ってムナの背中をトンと押した。 「ひゃあっ!」 突然だったので、ムナは盛大に頭からコケてしまった。 ポテッと軽い音が響く。 「うわぁ!御免!ムナ、大丈夫か?」 「うぅ・・・へ、平気、です・・・」 ムナは額をさすさすしながら立ち上がった。 痛みを堪えているのか、目にはうっすらと涙も浮かんでいる。 其の姿にトキとユゼを除くギャラリーがノックアウトされていた。 「???あ、あれ・・・?何で、みなさん倒れているんですか・・・?」 状況が読めず、ムナはキョトンと首を傾げた。 其の仕草に更に沈むギャラリー。 「さぁ?」 「良いんじゃない?其れよりさ、三人で買い物行こうよ」 「おっ!良いね。ついでに何処かに寄って行こうぜ!」 こうして沈むギャラリーを尻目にムナはトキとユゼと三人でお使いをしたのであったとさ。 ちなみに帰りに寄った甘味処でムナは特大あんみつをペロリと完食。 其の様子にユゼはビックリし、トキは慣れていたので笑っていたと言う。 終わり。 エメラルド2軍。 別名『ムナを守り隊』。何が如何なってこんな奴らになったのか・・・う〜ん・・・ ちなみにトキもちゃんと入ってます。でもトキの一番はタナとキスケですから。ええ。 今回はムナとユゼの出会い編でした。 ユゼは此れからずっとムナの親友で居続けます。大の仲良しになるのです。 まぁ、だからと言ってムナはずっと丁寧口調ですけど・・・
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