何故、自分は作られたのか。
何度も考えた事がある。
けれど
結局、何も答えは出ず。
ただ、在るが侭に生きる自分が居る。
誰も教えては呉れない。
自分にも分からない。
俺は、機械なのか・・・それとも。
紅い光、鋼の瞳
生憎の雨模様。
ヒマワキシティを後にしてミナモシティに向かう道。
此処は120番道路。
「何で皆この雨の中、傘も差さずに立ってるのかなぁ・・・?」
雨合羽を羽織ったアオイは道に突っ立っている他のトレーナー達を見て呟いた。
雨でぬかるんだ地面。
一刻も早く雨宿りをしたい一心でアオイは走る。
トレーナーの目を掻い潜り、漸く一息つけそうな場所を見つけた。
「此処なら十分雨宿りできるね!良し、皆出てきて大丈夫だよ〜」
アオイの一言でモンスターボールから、ポケモン達が出て来た。
冒険の始まりからずっと一緒に居る者と、途中で仲間になった者。
全員アオイにとっては大切な仲間。
「ひゃ〜・・・凄い雨だな。俺、絶対この雨ン中で戦いたくない!」
ミシロタウンから一緒に居るホノオが呟く。
「同感だな。俺だってこの雨の中で戦いたくない」
「兄ィは雨が苦手だもんな・・・・・・此れだけかよ、俺が兄ィに勝てるのは」
舌打ちをして心底悔しそうにしているレイリン。
其れを微笑ましく(?)見ているイシス。
「弟は兄貴に一生かかっても勝てないもんなんだぜ。おチビ」
「んだと、コラ!」
「悔しかったら背ェ抜いてみな?お・チ・ビ」
「殺す!今この場でぶっ殺してやる!!」
何時もの喧嘩が始まった。
出会った当初よりは良くなったとは言え、この二人の喧嘩は凄まじい。
特にレイリンがいつも全力で喧嘩しているものだから、たまったものではないのだ。
イシスが吹っ掛け、レイリンが乗る喧嘩。
レイリンは気付いていない。
この喧嘩がイシスのスキンシップであるという事に・・・。
「僕は雨が大好きだから戦っても大丈夫だけど」
「僕は周りが綺麗になるなら何だって良いよ?」
雨が大好きな見習い忍者のルゥに無類の綺麗好きのフィル。
そしてもう一人。
「ウルク、雨で錆びたりしない?大丈夫?」
無言でアオイを髪を拭いていたウルクに声を掛けた。
機械である彼。
機械に水は厳禁と頭にインプットされている為、アオイは心配になったのだった。
「気遣イ無用だ、アオイ。俺は防水加工しテある。此れくラい、何て事無い」
感情の無い声が返ってきた。
ウルクは、『成長する』機械らしい。
その昔。
ホノオがまだアオイに出会う前。其れよりも更に前。
ウルクはホノオの家に預けられていた。
幼かった二人は直ぐに友達になり、共に遊んだ。
そして別れがあり、出会いがあった。
再会した時、一度襲い掛かってきたウルクだが、ホノオを見て昔を思い出したらしい。
幼い頃のメモリーもホノオから貰ったリボンも大切に保存していた。
けれど、昔培った感情は圧縮され、消去してしまったらしく表情が無かった。
要らなくなったのか。
それとも
消去せざるを得なかったのか。
ウルク自身、覚えては居ない。
ウルクはいつも思う事がある。
『成長』とは何なのか。
何故自分は作られたのか。
頭の演算機能で出る答えはいつもエラー。
如何やら其の様に設計されているらしい。
機械がどれだけ考えても答えを出せないように。
答えが出るのは『成長』した機械だけだと。
俺はまだ成長していないのか。
ぼんやりと考える。
演算機能から出る無数のエラーの中で。
手を翳し眺め、仲間を見て考える。
エラーを表す音は無くならない。
「何考えてんだ?ウルク」
エラーが鳴り響く中で聞こえた声。
「ホノオ」
「お前、昔っから考え込むと長いよな〜。座り込んで、じっとして」
そう言いながらホノオはウルクの隣りに腰を下ろす。
ウルクは其れをじっと見ていた。
「良いんじゃないの?」
「え?」
「分からない事があってもさ」
考えている事を見透かされたような気がした。
「・・・・・・・・・如何言う意味だ?」
エラーの音が消えていく。
「分からない事がある。その分からない事を一生懸命分かろうとしている。
けれど、幾等考えても答えは出ない。何故出ないのか分からない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「答えが出ないのが悔しいんだろ?ずっとエラーの音しか出なくてイライラしてんだろ?」
「何、で・・・」
「知ってるのかってか?そりゃあ、俺とお前の仲だし。知ってて当然だろ」
得意そうにホノオは笑った。
そして、少し誇らしげに。
エラーの音は何時の間にか消えていた。
考える事を止めたからか。
それとも
答えが出たからか。
・・・分からないけれど。
少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
機械がそんなものを感じる事は無いのだとしても。
「なぁ、ウルク。覚えているか?」
「何をだ」
「約束。お前が俺ン家出てく時にしたろ?」
「・・・・・・ああ」
ウルクがホノオの家から出て行く時、二人はある約束を交わした。
二人だけの約束。
二人しか知らない事。
「"次に会ウ其の時迄、互いを決シて忘れナい事"」
「そう」
離れ離れになってもずっと友達だと。
幼い彼らはそう信じて約束をした。
絶対に忘れない、と。
「お前が襲って来た時、"忘れたな、こいつ"って思ったんだぞ」
「・・・すマん。お前だって一瞬分かラなかっタから」
少し居心地が悪そうにウルクは呟いた。
ホノオを見ずに。
「まだ、見れないのか?」
一瞬躊躇い、そして小さく呟く。
「自信が無い」
「そうか」
ホノオは苦笑した。
ウルクの肩を掴み、向き合って。
又笑う。
「ま、ゆっくり出来るようになれば良いさ。時間は沢山あるんだから」
「・・・そうだな」
ウルクは笑った。
本当に微かな笑みだったけれど。
其れが機械仕掛けのものだとしても。
「やっぱり、笑っている方が良いよ」
笑い合う事が出来るから。
「そうか」
未だ、答えは出ないけれど。
自分が『成長』しているのか分からないけれど。
だけど。
「そウ言って呉れルと、俺も嬉シい」
今日の午後。
静かに雨が降るこの日。
一体の機械は『成長』して
笑う事を覚えた。
『キュイッ』
「ん?なんか今変な音が・・・って如何した?ウルク」
「スまん・・・やっテしマった」
「げっ!ま、マジかよ!嘘だろ!?」
「ダメだ・・・・・・解除出来ない。すまん、痛いノは一瞬だカら」
『キュイィィィイイイイイイイイイ』
「ちょ・・・ま、待てウルク!落ち着けって!!」
「俺ハ落ち着いてイる。ホノオ、避けルと又やる事にナる。大人しく止まレ」
「嘘だろ―――!!!」
『チュドーン!!』
「・・・目標沈黙・・・ロックオン解除・・・・・・また、やっテしマった」
終わり。
サファイア1軍のもう一人の無性体、ウルクのお話でした。
ウルクは機械です。機械といっても普通の機械ではなくて、成長する機械です。
学習して記憶して蓄積して成長していくのです。
そんな彼だから思う事があるのです。
何故自分は唯の機械として作られなかったのか。
何故機械が成長する必要があるのか、とか。
考えても頭にエラーの音が鳴り響くだけで答えは出ませんが。
そういう風に設計されているのかもしれません。
けれど、ウルクは信じてます。
いつか答えが出る事を。
そんな機械らしからぬ機械のウルクでした。
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