初めて見たその瞳は、驚くほど紅くて
まるで炎の中に居るようだった。

けれど

本当はそうじゃなかった。
そんな事を言えば、又怒るんだろうけれど。



白の刃、赤の風
其の日は砂漠に居た。 お隣りさんからゴーゴーゴーグルを貰ったアオイは、早速それを付けて砂漠へ足を向けたのである。 砂漠は所々で砂嵐が舞い、ゴーグルをしていても視界は悪かった。 「う〜〜〜〜・・・こんなんじゃ、喋れないよ〜」 口を開くたびに砂が入り、喉が渇く。 砂嵐を避ける為、アオイは一時洞窟へと入っていった。 其処で漸く一息ついた。 「あ〜〜、なんかどっと疲れちゃったよ・・・。皆如何してあんな所に立ってられるのかな・・・」 砂を払い、水筒の水を飲んでアオイは一人愚痴る。 モンスターボールから手持ちのポケモンも出して。 「此処は地面タイプのサンドと草タイプのサボネアと・・・地面エスパータイプのヤジロンか・・・」 「アオイ、此処で誰か仲間にするのか?」 ミシロタウンからのパートナーであるホノオが興味津々の様子でアオイに聞いた。 「う〜ん・・・丁度1つ空きが出来てるからさ。パーティのバランスを考えて・・・ヤジロンかな」 其の言葉に特に誰も意見する事も無く。 こうしてヤジロンを仲間に加えることとなった。 洞窟を出る前に 「アオイ、ヤジロンは高確率で自爆をすルとデータにアる。戦い方は慎重に決めなクてはならナい」 パーティの知恵袋であるウルクが口を開いた。 中身が機械であるウルクのデータバンクには、ありとあらゆるポケモンのデータが詰め込まれている。 弱点や攻撃の仕方、防御など・・・全て戦闘に関することだけだが。 「そんなに直ぐに自爆するの?」 「過去のデータにハ出会い頭に自爆したモのも居るとあル」 「うわぁ〜・・・結構仲間にするの大変かも」 ウルクの言葉に少し尻込みをするアオイだったが、 「うん、此れもポケモンブリーダーになるための修行と思えば、大丈夫だよね!」 と、持ち前の明るさ・・・と言うか、まぁそんなんでやる気になったらしい。 外は相変わらずの砂嵐。 アオイの心はやる気の嵐。 水色の服を着た小柄な忍者に笑いかけた。 「ルゥ、頼んだよ」 「うん。僕、頑張るよ」 ルゥはにこりと笑って答えた。 「自爆だけは避けないと・・・てか、自爆させたくないよ」 其れを心に近い、いざ、ヤジロンを仲間にする戦いの火蓋が切って落とされた。 が、世の中はそう上手くいくものではない。 ヤジロンに会う度、出会った全てのヤジロンが自爆をしていった。 ろくに話も出来ないまま。 「如何してそんなに自爆したがるのさ〜!」 自爆して、力尽きたヤジロンに問い掛けても何も返ってこない。 「うう・・・自爆してもモンスターボールに入れることが出来れば、ポケモンセンターに連れて行けるのに」 アオイは暫く其の場から動けなかった。 自爆したヤジロンの体を手に取り、涙を流した。 やがて、其の体は砂となって風に流された。 「アオイ!ヤジロンだよ!」 片時もクイッ○ルワ○パーを手放さなず、イソイソと砂漠で掃除をしていた(無謀)フィルが指を差していた。 其の指の先には確かにヤジロンが居た。 しかも此方に向かってくる。 「こ、今度こそ、仲間になって貰わなきゃ!」 アオイはルゥに指示を出そうとした。 が、ヤジロンの向かう先はルゥではなく。 「・・・・・・?」 一人暇そうにしていたレイリンだった。 「何だよ。何か用かよ」 生来の性格の所為で人見知りをするレイリンは、近付いてきたヤジロンを睨みつけた。 睨まれたヤジロンは何も言わず、只にやりと笑った。 「なっ・・・何なんだよ、てめぇ!」 「ど、如何したの?レイリン」 「この野郎が俺の事、笑いやがったんだ!」 笑われたことがそんなに癪だったのか、レイリンは既に臨戦体制に入っていた。 「アオイ、こいつは俺がやる!」 「え?う、うん」 レイリンの勢いに飲まれ、アオイは戦う事を了承した。 悪タイプのレイリンにエスパータイプの技は一切効かない。 其の点に関してはレイリンが圧倒的に有利だった。 が、問題は他にあった。 「てめぇ!さっきから何ニヤニヤしてんだ、コラァ!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ニヤニヤ)」 相手のヤジロンは何も言わずに、只笑いながらレイリンの攻撃を避けていた。 レイリンはアオイのパーティの中でも最強の攻撃力を誇っている。 が、相手が地面タイプも持っている為に思うように体力を減らせない。 当たっても、かすり傷程度にしかならないのだ。 「くそっ!チョロまかと逃げやがって」 短気なレイリンの堪忍袋の緒が切れかけていた。 そんな状況で、ヤジロンが口を開いた。 「チビ」 其れは、決して口にしてはいけない言葉だった。 誰よりも背が小さい事を気にしているレイリンにとって。 其の言葉は禁句以外の何者でもない。 「――――――――――今、なんつった」 レイリンの周りに風が渦巻いていく。 竜巻が起きそうなほどの風が吹き荒れる。 そんな状況でもヤジロンは笑いを崩さず、再度禁句を口にした。 「チビ」 何かが切れる音がした。 レイリンの周りで渦巻いていた風は、彼の手に風の刃となって凝縮された。 凝縮されなかった風が砂を舞い上げ、生きているかのようにヤジロンに襲い掛かる。 其れを軽々と避けながら、ヤジロンは笑っている。 「ぶっ殺してやる!このクソ野郎が!!」 風を使い、通常の倍以上のスピードでレイリンは斬りかかった。 かまいたち。 彼が最も得意とする技。 何本もの風の刃がヤジロンを襲った。 しかし其れに動じる事も無く、ヤジロンは閉じていた両目を開いた。 紅い瞳と黒と金色の瞳。 「遅いよ、チビ」 声と共に突き上がる岩。 巨大な岩はレイリンを目掛けて襲い掛かる。 「なっ!」 攻撃が当たったのは、同時だった。 「レイリン!大丈夫!?」 「・・・ぅ・・・あ?」 少し気を失っていたらしい。 レイリンはぼうっとしながら起き上がった。 「あれ?俺は・・・」 「ヤジロンと戦っていたんだよ」 「あ!そうだった、あの野郎!!」 レイリンは瞬時に思い出し、居る筈の相手を探した。 しかし、其の姿は何処にも見当たらない。 「アオイ、あいつ何処行ったんだ?」 「え?後ろに居るよ」 「へ?」 「お目覚めか?チビ」 振り向くと、其処にはさっきまで戦っていたヤジロンが居た。 傷の手当てをして貰ったらしく、包帯とバンソウコウだらけだった。 其れはレイリンも同じなのだが。 「あのね、仲間になってくれるんだって」 「はぁ!?マジかよ!!よりにもよってこいつが!?」 レイリンはあまりの事に激しく反論した。 が、聞き入れて貰えず、結局不敵な笑みをするヤジロンが仲間になった。 「宜しくね、ええと・・・」 アオイはまだヤジロンから名前を聞いていなかった。 其の様子を見て、ヤジロンはふと笑う。 「イシス。其れが俺の名だ」 不適な笑みとは少し違う、何処か優しい笑み。 「分かった。宜しくね、イシス」 「此方こそ」 イシスと名乗ったヤジロンは、レイリンの方を向いた。 そして不敵な笑みで。 まるで人をからかうような、そんな笑みで。 「宜しくな、おチビ」 「誰がチビだ、コラァ!!」 こうして、イシスが仲間になったのだった。   終わり。 ポケモンでの初小話です。 イシスが仲間になるところ。イシスはスタメンで最後に仲間になったんです。 相手はレイリンで。最終的にはコンビを組んで義兄弟の間柄になる二人ですが、こんな出会いでした。 イシスの第一声が「チビ」ですから。レイリンキレました。 1番の攻撃力を誇っても、地面タイプが混ざってるイシスには致命傷を与えられないし。 イシスだってエスパー系の技はレイリンに一切効かないし。 結果は相打ちで。 レイリンは最後までイシスが仲間になる事を渋っていたんですが、今では良いコンビ、良い兄弟です。 相変わらず『おチビ』と呼ばれてますが。
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