出逢いは何時も突然で困る。 何故かと聞かれても分からない。 困るものは困るのだ。 理由など無い。 出逢いが突然なら別れも突然だ。 気が付いたら居なくなっていることもあった。 それなら 出逢いなんて無ければ良いじゃないか。 困ったことに それも出来はしない。 緋憐群青 第一話 それは静かに雪が降りしきる日のことだった。 竜樹は部屋で一人、本を読んでいた。 「竜樹」 不意に呼ばれて、竜樹は顔を上げた。 見ると其処には緋奈が立っていた。 「何か用か?」 「用があるから呼んだのよ。密栂姉さんが呼んでるわ」 「・・・・・・母が?」 竜樹は本を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。 部屋を出る時に、竜樹はポツリと呟いた。 「・・・云った通りになったな、あいつの・・・」 「え?」 「何でも無い」 そう云い残し、竜樹は密栂が待つ部屋へ向かった。 「ねぇ、まだおれ、ここでまつの?」 「もう少し我慢しなさい、葛良」 葛良と呼ばれた少年はつまらなそうに座り込んでいた。 が 「あぁ〜!!!もうおれ、がまんできないぜ!!!」 と云い、ガバっと立ち上がり、部屋から出ようと襖に手をかけようとした。 其の瞬間、一足早く襖が開き葛良は前に倒れてしまった。 「いって〜〜〜。な、なんだよ」 「お前こそ何だ、小僧」 葛良の頭上から澄んだ声が返ってきた。 葛良が顔を上げると、赤い瞳の少年が立っていた。 葛良とは違い落ち着きがあるというか、彼には表情が無い。 葛良にはそれが気に食わなかった。 「あ、竜樹。一寸頼みたい事があるの」 当主であり、少年の母である密栂が彼――竜樹を呼んだ。 「何だ。頼み事とは」 竜樹は無表情の侭、密栂に尋ねた。 「まあ、良いから座りなさい」 密栂に云われる侭、竜樹は座った。 一方、葛良はむすっとした侭、竜樹を睨みつけていた。 「竜樹、この子が夕魅の子の葛良よ」 「ほう・・・で、頼み事とは何だ?」 竜樹は葛良を一瞥し、ふと視線をそらして又尋ねた。 密栂は笑いながら 「この子の面倒を見て欲しいのよ」 と云った。 「はぁ!?おれはいやだぞ!!こんなやつにめんどうみられたくねぇ!!!」 いきなり、葛良が反対した。 「如何して?竜樹なら適任だと思うんだけど」 「やだやだ!!のーめんみたいにひょうじょうがないやつといっしょにいたくねぇ!!!」 「葛良!止しなさい!!」 夕魅は葛良を叱った。 「構わぬ。小僧の云う通りだからな」 静かに竜樹は云った。矢張り無表情の侭で。 「小僧の云う通り、他の者にやらせれば良いであろう。俺では無理だ」 そう云い、竜樹は立ち上がり部屋から出ようとした。 すると、密栂は微笑して 「此れ、焔羅兄さんからの頼み事だって云っても引き受けて貰えないかしら?」 「・・・焔羅兄の?」 『焔羅』という言葉を聞いて竜樹は立ち止まった。 そして、少し考えるような仕草をし、 「・・・・・・焔羅兄からの頼みなら引き受けても構わぬが、小僧の意見は如何なる?」 と、葛良の方を見ながら云った。 葛良は相変わらず竜樹を睨み続けて居る。 「この際、当主命令よ。葛良、此れから竜樹に面倒見て貰いなさい」 「えぇ〜〜〜!!マジかよ!?」 葛良は一際大きな声を上げて不満の表情を見せた。 「コラ、決まったんだから従いなさい」 そんな葛良に又、夕魅は叱り付けた。 「ああ、それと」 何か思い出したように密栂が云った。 「竜樹、一寸手を出しなさい」 「?」 竜樹はわけが分からなかったが、云われた通りに利き手である左手を出した。 すると、密栂は一本の紐を取り出し片方を竜樹の左手首に縛り付け、もう片方を葛良の腰に縛り付けたのだった。 「な、なにしやがるっ!!」 葛良が紐を解こうとしたが紐はびくともしない。 竜樹も試しに解こうとしたが結果は葛良と同じだった。 「・・・何だ?此れは」 竜樹は訝しげに密栂に聞いた。 「二人に親密度を高める為には丁度良いでしょ。其れは私にしか解けないようにしてあるの」 密栂は微笑みながら云った。 其れを聞いた葛良は心底厭そうな顔をし、竜樹は矢張り無表情のままだった。 「じゃ、二人とも仲良くね」 と、密栂は二人を笑顔で部屋から送り出した。 二人は部屋から出るまでずっと無言のままだった。 「密栂姉さん、此れで本当に良かったのかしら?」 夕魅が心配そうに云った。 「大丈夫よ。竜樹なら。前よりも症状は出なくなっているみたいだし。其れに・・・・・・」 「其れに?」 「あの子には葛良と居る事で笑えるようになって欲しいのよ」 と、少し悲しげに密栂は云った。 一方、竜樹と葛良は矢張り無言の侭、竜樹の部屋に居た。 葛良は沈黙に耐え切れずいきなり、 「おれのなまえはかずらだ!!!」 と叫んだ。然し、 「知っている」 と単調な答えが返ってきた。 「じゃあ、なんでなまえでよばねぇんだよ!」 「小僧は小僧だろう?一人前になったら呼んでやる。其の時まで『小僧』だ」 淡々と返す竜樹に葛良は益々機嫌を悪くした。 「てめぇのなまえは!?」 「・・・聞いてなかったのか?俺の名は竜樹だ」 竜樹は少し呆れた様子で云った。 すると、葛良は手を差し伸べ 「よろしく。たつにぃ」 と云った。 竜樹は一瞬吃驚したように、然し矢張り無表情に 「よろしく」 と云いながら其の手を握った。 第二話へ はい。又、シリアスに挑戦です。 今回は竜樹と葛良のお話。出逢い編です。 最終的には仲良しになるんですが、この頃は仲良くありませんね。 バリバリに仲悪いです。最悪です。 竜樹はこの頃無表情でした。本当に。感情すら無いと思ってくれても良いです。 其れをぶち壊していくのが葛良の役目。 おかげで竜樹は育児上手へと立派に成長していくのでありました・・・。 葛良のセリフが全部ひらがななのは漢字を覚えてないからです。 読みにくかったらすいませんでした。 |