見たくなかったら目をつぶれ。

聞きたくなかったら耳を塞げ。

全てが厭になったら逃げ出せばいい。

難しくはない。



ただ、



其の時は



この世の全てに負けたと思え。



其の言葉が耳から離れないまま、雅緋は一人、月を見ていた。



                          暗闇幻想



「みやちゃん、元気ないね」
討伐に来て二週間が過ぎようとしていた。
いつもならまだ討伐途中なのだが討伐隊の一人の様子がおかしいことを理由に早々に引き上げてきた。
家まで帰るのに相当な時間がかかるため、ひとまず野宿をしようと
今回の討伐の隊長である露斗が云ったのはもうかれこれ数刻前。
其の間に彼らは各々食事を済ませ、見張りである露斗を残して眠っているはずだった。
しかし、彼はふと紅い髪の少年が起きていることに気がついた。
何処を見ていると言うわけでもなく只、虚空を見つめている彼に声をかけた。

返事はない。

露斗は気を悪くする素振りも見せずに、少年の隣に腰をおろした。
少年は気づいているのかいないのか全く反応しない。
それでもお構いなしに露斗は話し掛ける。
「みやちゃん、雀澄女姉・・・お母さんのこと、気になるの?」

やっぱり返事はない。

「もう、少しは反応してくれなきゃ、お兄ちゃん、スネちゃうゾ!」
そう云いながら少年の額を小突いた。
すると、少しだけ少年は反応した。
視線の先を虚空から露斗に移した。
しかし、彼の瞳に露斗は映っていない。
映っているのは底なしの闇だけだった。



紅い髪の少年――雅緋は生まれつき目と耳が不自由だった。
それでも討伐に出掛けることが出来るのは彼自身の努力と、彼の母親――雀澄女のおかげだった。
一族の誰よりも雅緋のことを想い心配していた。

そんな彼女が今月の初めに倒れたのだ。

心配するあまりなかなか討伐に行こうとしない少年たちを、雀澄女は笑いながら
「お前たちがそんなんじゃ治るモンも治らないよ。土産楽しみにしてるから行っといで」
と云って送り出した。
いままで無表情だった雅緋が少しだけ表情を出したのはこの時がはじめてだった。



討伐に来てもどこか雅緋は落ち着かないようだった。
戦闘中も何か考えているような感じだったのだ。
たぶん母親のことが心配なんだ、と他の二人と話し引き上げることにしたのだった。

「みやちゃん、雀澄女姉は大丈夫だヨ。あんなに強い人、そう簡単には死なないって!」
聞こえてないとわかっていても露斗は雅緋を励ますように声をかけつづける。
そんな彼を雅緋はじっと見ている。
何か云いたそうだったが、ふいに顔を背け露斗から離れ寝転んでしまった。
そんな彼の背中を見つめ露斗は静かに云った。
「きっと大丈夫だよ。だから安心していいんだ」

雅緋はやっぱり反応しなかった。

「おやすみ」

夜の底なし闇に薪の弾ける音が吸い込まれていった。




第二話へ

・・・・・・・・・・・・あ、あはは・・・。
何を思ったんでしょうかねえ!?自分!!小説に手ぇ出してしまいましたよ!
あ、文才がないのは十分承知の上ですので石投げないでくださいね。
この話はとりあえず雅緋が主人公です。
本当なら天界にいる時からはじめようと思ったんですが、いかんせん天界にはあの二人が氏神として君臨してるし、
しかも其の片割れが雅緋の父親なモンだから無条件でもう一人もくっついてくるんで止めました。
今回は『目指せ、シリアス!!』です。
雅緋の母上死ぬ間際なとこ。しかも続きます。続くんです!!(たぶん)
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