Xmas magic



それは、聖夜の魔法のように

それぞれの想いは慈しみられ、育まれていく…

それは、まさにあなただけの……





Xmas magic





それは巷で「聖夜」と呼ばれる日のことだった。
直訳すればホーリーナイト…知る人ぞ知るその日は、いわゆる「クリスマス」のことだ。
神様の誕生を祝して祝う日だと言うが、それは今時の人々はあまり意識せず――主に「祝いの宴を執り行い親しい者にプレゼントを贈る」が一般的だ。勿論、普段旅をしていようが――ーそれは、ルーク達一行にも同じことが言えた。
ここはケテルブルク、雪降る町。いかにもクリスマスの雰囲気を醸し出し、そして本日もこの地には雪が降っている。クリスマスに雪が降ることをホワイトクリスマスというが、今日はまさにそれにあたるのだろう。
そんな雪降る下で、クリスマスを楽しみにしている者がいた。
焦げ茶の少々ウェーブのかかった髪を揺らしながら、機嫌がいいのかスキップを踏むように街道を歩いていく少女…彼女の名は、アニス・タトリン。
暫く歩いていくと、目の前に見慣れた人影を見つけて、アニスはたったったっと走っていく。やがて追いつくと、目の前の二つの人影の肩に向かって元気のいい声をかけた。
「ティアー!ナタリアー!」
「アニスおかえりなさい。どう、今日の御馳走の食材、買えた?」
「もっちろん!」
その人影は、ティアとナタリアだ。話の内容からして、今日はクリスマス、それに合う様な豪華な食事を振舞う予定らしい。――最も、料理を作る役に恐らくナタリアは除外されそうだが。
周りをなんだか挙動不審っぽくナタリアが見渡す。…そして三人以外誰もいないのを確認して、ナタリアはアニスにかなり小さな声で耳打ちした。
「……それで、頼んでおいた…“秘密兵器”は買えましたの?」
「へへへ、勿論バッチリですよぅ」
アニスのニヤリとした表情がなんとも本格的で怖い…。ティアは心配そうに二人を見つめてから、そっと二人に近づいて、輪に交わるようにして耳打ちした。
「……ねえ…本当にやるの…?」
「当たり前ですわ。ここまできておいて辞退とかは許しませんわよ」
「そうそーう。それにもしかしたらこれでルークのハートをギュッ!とゲットできるかもしれないし〜♪」
「あ、アニス!!」
特定の名前が出た途端ティアの頬が一気に蒸気し真っ赤になる。その反応が面白いのか、ナタリアとアニスは一緒になってクスクスと笑い始めた。ティアは恥ずかしそうに両手を掌で覆いながら、もうっ!と反抗の声を漏らしている。
そんな風にして絶えない話を繰り返しながら、三人は今夜泊まっている…尚且つ、男性陣三人が待機し待っているホテルへと向かっていった。



「うおぉおおお……!す、すっげー!」
ルークが目の前の光景に歓喜の声を挙げた。それもそのはず、目の前にはまさに貴族として何不自由なく暮らしていた頃良く見た、素晴らしく豪華な御馳走がテーブル一杯に並べられていたからだ。久しぶりに見るこの煌びやかさに、思わずルークは目の前の光景が錯覚かと思い頬をちねったりしている。
「こ、これマジで食って良いのか?」
「まだ駄目よルーク。あとちょっと待って」
更なる料理をホテルから借りた厨房からティアが運んでくる。どうやらまだあるらしく、今持っていた料理をティアが置き、次の食事を運ぼうとしに行くと、ルークがティアに近づいていった。
「俺手伝おうか?」
「……つまみ食いしないなら、ね」
「ちぇ」
そんな感じでお互いぶつくさいいつつも、二人は厨房の方へと歩いていった。
二人が行ってしまった頃、ルークが先程までしていたようにガイもまた料理を見て、隣に居たナタリアに尋ねた。
「……すげぇなこりゃ。これ全部三人が?」
「そうですのよ。…私は料理はしておりませんけれど…」
「あ、やっぱり」
「…ガイ、私に何かご不満がございまして?」
王女育ちのナタリアが料理など出来ないことは皆百も承知だったので(勿論ルークも)、ガイがつい滑らせた言葉にナタリアはガイを睨む。しかし、その様子を逆に、たった今部屋に入ってきたジェイドにクスクスと笑われてしまった。
「ジ、ジェイド!」
「ああ、これは失礼…相変わらずの仲の良さだと思いましてねえ」
「「?!!」」
ジェイドの言葉に二人が同時に頬を紅潮させる。その様子がますますおかしいのか、ジェイドは声を殺してクックックッと笑いを堪えている。そんなジェイドの所に、アニスが近づいてきた。
「たーいーさ♪」
「アニス。どうしたんですか?」
ジェイドがそう問うと、アニスは両手を後ろにやりなんだかもじもじしているような動作で、ちょっとトーンの落とした声でこっそりと言った。
「大佐、今夜はお楽しみですからあんまりお酒飲んで潰れたりしないで下さいね♪」
それを言い終えた瞬間に、アニスは小走りでたーっと速攻でジェイドの元から逃げるように去っていった。その後姿を見送りながら、一人残されたジェイドは、
「…今日は酒ではなくシャンパンしかないのですが…って、聴いてませんねえ」
そう呟いて、暫く彼女の言葉に困惑したという。



それから、ようやくクリスマスパーティーの準備が整った頃。
テーブルを仕切りなく埋め尽くしている豪華な食事、今日限りのホテルサービスということで全部屋に設置されたとかいう小さいがきれいに煌くクリスマスツリー、そして窓から見えるは未だにしんしんと降る雪……そんな光景が目に入り、六人全員がそれぞれの声で歓喜の声をあげた。
「ひえ〜っ、マジすげえ…」
一際大きくルークのそんな声が響いて、準備をした三人としては上機嫌なようだった。
そんなこんなで、皆は椅子へと座り、その煌びやかな雰囲気に少々戸惑いつつも、食事に手を出した。まずルークが、まるで久々に見たステーキに目を輝かせながらぱく、と口に運ぶ。ゆっくりと味わい、飲み込んだ瞬間、ルークはいかにも感動したような表情を見せた。
「うめえ!これティアが作ったんだよな、マジうめえよ!」
「……あ、ありがとう」
素でティアを褒めるルークに、思わずティアは赤面した。少し前までの彼なら、こんなの城のとに比べたら…とか、そんな嫌味を真っ直ぐに吐き出すだろうに、この微笑ましい光景がなんだか凄くいいものに見えた。
「これも上手いな。流石、ティアだな」
「そうですね」
ガイとジェイドもティアの料理を絶賛している。…料理を作っていないナタリアとしては少々複雑だったが、ティアの料理の美味しさをわざわざ雰囲気を盛り下げて不味くするのはどうかと思ったので黙りながら黙々と食べ続けた。
「大佐ー、これ食べてみて下さいよー」
「ん?」
ふと、ジェイドの隣に座っているアニスがそう言いながら、ジェイドの方へ皿をよこした。どうやら、その皿に盛り付けられているのはパスタらしかった。わざわざアニスがものを勧めるという事は…ジェイドはすぐにその真意を理解した。
「これはアニスが作ったんですね?」
「わぁ、よく分かりましたね大佐!……で、食べて貰えますかぁ?」
「ええ、頂きますよ」
ニコ、とジェイドが微笑んだのでアニスもまた嬉しそうに笑う。ジェイドはパスタを自らの皿へよそおうとしたが、ずいっ、と目の前にフォークに巻きつけられたパスタが目の前に差し出された。
「大佐〜♪ハイ、アーン♪」
「遠慮させて頂きます♪」
ニッコリと微笑んでジェイドが速攻で断ったので、アニスはこっそり逆方向を向いてチッ!と舌打ちした。
(…大佐は一筋縄ではいきませんね。やっぱりアレを実行するしかないですね…!)
一人アニスは握り拳を作り決意に満ちた顔を浮かべていた。



食事会から数時間後。片付けも早々に終わり、いつでも就寝出来るようになった頃、女性陣三人の作戦は決行されることになった。アニスが買ってきた、まさにあの通称“秘密兵器”が。
ルークはティアに、ガイはナタリアに、ジェイドはアニスに。それぞれいずこかへと、待ち合わせを託けられ、遅れてはならないと部屋を早めに出て行く。
そうして、男性陣三人が行ってしまったのを確認した後、三人は部屋に再びこっそり戻り、荷物袋の奥の奥に仕舞い込んであった、厳重に何枚もの包装紙で包まれた“秘密兵器”を取り出す。
「…ふっ、ふふふ!準備はこれで万端ですよぅ!さあ、いざ参りましょー!!」
一番最初にかなり怪しげなアニスの声が響き、おろおろとティアが問いかける。
「……ほ、ほんとにやるの…?は、恥ずかしいわ…」
「なりませんわティア!殿方は晩熟なのですから、偶には私達が勇気を出してやらなければ…!」
「わ、わかったわ…」
それぞれの決意を確認すると、三人で友情育むようにめいっぱい手を合わせ、真剣な眼差しで一斉に言う。
「「「………Good luck!!」」」
そして、三人は別方向へ、それぞれの待ち合わせ場所へと進んでいった。










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