言葉では表現出来ない優しさ
「うるせぇ雨だなぁ…」
先程からせわしなく窓を叩き続けている豪雨と強風に、ルーウェンは天井を見つめながらひとりグチをこぼしていた。
人間も軽く吹き飛ぶんじゃないかと言いたくなるような風は、時折家全体を揺らすほど強い。
今は夜中の二時。
が、この喧しい自然現象のせいで眠気はとうに吹き飛んでいた。
流石にこんな時間では部屋を出る気にもなれない。
部屋は割と広いから、剣の素振りは出来なくもないが、やはり気が進まない。
先程からルーウェンはベッドに転がりながらぼ〜っと天井を見ていた。
(……まぁ、このままでいても何も変わらねぇし、目をつぶってりゃその内眠れるか)
そう思い、目を閉じた時だ。
ギィ……。
(…ん?)
部屋のドアが開く音が聞こえた。カギを閉め忘れたか?
それ以前に一体誰がこんな時間に?
万一の事もある。ルーウェンは壁に立てかけていた愛用の剣を手に取り、反対の手を枕もとの照明のスイッチに置いた。
部屋に入り込もうとしている何者かは、察するに音を立てないように一生懸命のようだ。
が、この家は殆どが木で出来ている為歩いた所は大抵軋む。
こっそりしているつもりでも、歩くたびにぎしぎし鳴られては全く持って意味を成さない。
(…敵だったら物音とか気にせずに突っ込んでくるよな? それに、気配が…)
まさか。いや、まさかな。
そう思いながらも、ルーウェンは剣を握っていた手を離した。
「おい、誰だ? 何か用か?」
尋ねながらルーウェンはとりあえず枕もとの照明のスイッチを入れた。
部屋がほのかに明るくなり、視界が利くようになる。
途端、部屋に入り込もうとしていた何者かが小さく「きゃっ」と悲鳴を上げた。
「…クローディア」
感じられる気配から、薄々予感はしていたが…。
煌びやかな金髪のその人は黒い寝間着を着用している所以外、普段と変わりは無い…ように見えたのは一瞬だけだった。
よく見れば、華奢なその身体は小刻みに震えていた。
(……!! そうか…。何でもっと早く気付かなかったんだ、俺…)
窓の外で相変わらず暴れ続けている豪雨と強風の騒音を聞き、ルーウェンは軽く後悔の念に襲われる。
この悪天候、いつ雷が落ちてもおかしくない状況だ。
そして、クローディアは雷と真っ暗なのが大の苦手。
雷の音を聞くと普段のしっかりとした部分がカケラも無くなるほど取り乱してしまう。
以前、我を見失ったクローディアに抱きつかれ、直後に彼女自身にシメられた経験があるが、まぁ、それは置いといて。
「そこにいるのも何だ。とりあえず、入ってきな?」
ルーウェンは優しく声をかけたが、クローディアは――いつものように、と言うべきか――肩を震わせて怒り出した。
「ちょっ…!! 何言ってるのよ!! 何で私があなたの部屋に…!!」
「…現に入り込もうとしてたじゃねぇか」
「ちがっ…!! それは、野蛮人のいびきが五月蝿いから注意しに…!!」
「あのなぁ。俺は今夜は一睡もしてないぜ。もうちょっとマシな言い訳考えてこいって。…それ以前に俺のいびきってそんなには五月蝿くないと思うけど…」
何か本当の事を言われているみたいな気がし、軽くヘコみながらルーウェンはふぅっと溜息をついた。
と、その時だ。
「……!」
「っ!!!」
ドォォォォォォォン!!!と激しい轟音が響き渡り、黒一色の空が一瞬だけ一気に明るくなる。
落ちた。しかも、かなり近くに。
「きゃああああああああああああああっ!!!」
直後にクローディアの大絶叫が部屋に響き渡った。
しかも、今の雷のせいで停電したのだろうか、枕もとの照明がフッと消えるというおまけ付き。
「お、おい!! 落ち着けって、そんな大声を――!?」
ルーウェンは大慌てでクローディアを諭したがその言葉も最後まで発せられなかった。
ぼふ!! と大きな音を立ててクローディアはルーウェンに勢いよく抱きついていた。
「ちょ、おい…!」
「恐いの!! 恐いの!! 雷も真っ暗なのも恐いのよぉ!! 助けてぇ…!!」
いつぞやの時のように、クローディアは既に自我を失っていた。
以前のは、そんなに雷は落ちず停電も直ぐに直ったが、今回は勝手が違う。
無情にも、先程の大きな雷がきっかけになったかのように、雷が次々と落ちてくる。
挙句の果てに、真っ暗になってしまったらその恐怖は更に倍増するだろう。
目元に涙を浮かべ縋りつく様にルーウェンに抱きついているクローディア。その華奢な身体は大きく震えていた。
「クローディア……」
しがみつく手から滲み出ている汗の感触が、しっかりと伝わってくる。
彼女が、雷と真っ暗が大の苦手だというのは分かっているのだが…。
だが、どうしてやればいいのだろうか。
(…好きなコが目の前で泣いてるってのに…俺は何も出来ねぇのか)
(いや、俺に出来ることっつったら…)
軽く頷き、そして。
クローディアの身体をぎゅっと抱きしめた。
「っ!!」
流石に我に返ったのだろうか、彼女の体温が微かに上昇した。
「ちょっ…!! いきなり何を――」
「しっ!!」
抗議をしようとしたクローディアをルーウェンが制し、反射的にクローディアは口を閉じた。
その直後、また雷が大きな音を立てて何度も落ちてきた。
まるでガンナーの集団が強力な銃を一斉に発射しているかのように、その音は激しい。
「ひっ」と小さく悲鳴を上げ、一瞬だけびくっとクローディアの身体が跳ねる。
ルーウェンは、クローディアの恐怖が少しでも和らぐようにと念じながら、彼女の身体に回している腕に力を込めた。
「……呆れた、わよね…」
止む様子が無い雷に小さく舌打ちしていた時、ルーウェンの腕の中のクローディアがぽそっと呟いた。
「……こんなに雷が苦手だなんて…」
この状況では少し失礼だとは思いつつも、普段は決して見せない後ろ向きな彼女が何だか可愛らしくルーウェンは軽く微笑んだ。
「そんなワケねぇ。雷が恐いのを、誰も笑いやしないさ」
幼子をあやすようにクローディアの頭をゆっくりと撫でる。
彼女自身も特に抗議する素振りは見せず、ルーウェンに身体を寄せていた。
「…ルーウェン……」
「ん?」
「…その、えと…あ、ありがとう……」
「ああ」
素直にお礼をしてきたクローディアに少しだけ驚いたが、すぐに大きな嬉しさがそれに取って代わられる。
それから数分の間、二人は特に言葉も交わさずに、身を寄せ合っていた。
「……」
ルーウェンは窓の外の音に神経を傾けた。
どうやら悪天候は過ぎ去ったようで、先程の豪雨がウソのように静かに雨が降っているだけだった。
強風も収まり、雷も止んだようだ。
停電も回復したらしく枕もとの照明が突然パッと灯った。
それでも、ルーウェンはクローディアの身体に回している腕を解くつもりはなかった。
「…ね、ねぇ…」
クローディアが顔を上げた。彼女の顔は少しだけ赤く染まっていた。
「…その…雷、止んだわよ…?」
そう尋ねる彼女の表情は、どうして離さないの?、と言いたげだ。
ルーウェンは微笑みながら言った。
「…たまには良いだろ? それとも…イヤか?」
「…!! そ、そんな事言ってるんじゃ…ないわよ……」
返す言葉を封じられ押し黙ってしまったクローディアの顔は一瞬で真っ赤になっていた。
(…可愛いな)
最も言いたい本音はとりあえず心の中にしまっておこう。
彼女の体温は数分の間でかなり上昇していた。
そして、彼女だけでなく、自分の体温も上昇している事にルーウェンは気付いた。
おまけ?
「「わ〜かさ♪」」
「…また貴様等か……」
「どうッスか? テアちゃんとの進展具合は?」
「手繋ぐ位は出来たッスか?」
「…貴様等に話す筋合いは無い」
「まぁまぁ、そう言わずに〜♪ こんな感じにラブラブになった方がスッキリするッスよ〜♪」
「……これは…写真? …師匠、これって…」
「……貴様等……我々をからかう為ならば盗撮もお構いなしか…」
「「んもう〜♪ 人聞きが悪いッスよ〜♪」」
管理人の戯言/笑)
射駆矢様より、我が家のメイキング!DE!戦士♂×僧侶♀小説を頂きました〜〜〜っvv
いつだか、ブログで密やかに描いた「僧侶さんは雷が怖い」という話を、こんな素敵な小説に発展させて下さいまして…!
もう…僧侶さんのツンデレ具合+弱り具合が、我がメイキングながら、たまらなく可愛すぎて、悶えまくりでしたよvv
勿論、戦士も私が思っていた何割増しにも格好よくなっていて!()…ルーウェンっていい男だったんですね…(剥
更には、おまけまで!若と悪代官コンビの会話を書いて頂けて…!若のからかわれっぷり+ルーウェンとクローディアの撮られっぷり(笑)がw(笑
射駆矢様、こんな素敵な小説をわざわざ書いて頂き、本当に有難うございましたっ!!大切にさせて頂きます!!ww
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