私がこいつらについて行く事になってもう結構経つ頃。 何故だか知らないけど、とある者からの視線がきているようで気になってしょうがない。 …ただの気のせい、のはずなのに。 どうしてこんなに気になるのかしら… 意識 よく晴れて太陽が照るある日の事、ヴェイグ達はとある場所にて休息を取る事となった。 ヴェイグはマフマフと言う種族(最も、本当はマフマフと言う言い方とは違うのだが)のペット、ザピィと共に何処かに休みに行った。マオと言う少年は、楽しそうに変な歌口ずさみながら切り株の椅子に座っている。もうすぐ昼なので、この一行随一(?)の料理人、ティトレイの昼ご飯を待っているのだ。よほどお腹がすいているのか、足をバタバタと上下させて「まだ〜?」と何度も催促している。それに呼応するように、料理人ティトレイは「もうちょっと待て!」と促しながら絶品と称する料理に手を拱いている。 騒がしくも微笑ましいその光景を、一行の治療係・アニーはクスクスと微笑みながら見守っている。なんとも楽しそうな雰囲気だ。 それとは数メートル離れた場所に、ユージーンは腰掛け三人を見つめている。 …いや、少女を、とでも言うべきか。 前々から口に出さずとも、ユージーンが何かとアニーの事を気に掛けているのは自分も分かっている。詳しい事は知らないが、何かと因縁があるのだろう。最も、自分には関係の無い事だが。 さて――昼の支度が終わり、ティトレイが四つ星と推定する絶品料理が運ばれてきた。良い匂いを醸し出すそれは、なんとも人の心をくすぐるものだ。今まで姿をぽつんと消していたヴェイグも、ふっと現れて来て、マオ待望の昼ご飯となった。 「飯だぞ〜、ホラホラ、ヴェイグにユージーンもこっち来いよ!」 ティトレイの声に促され、名を呼ばれた二人は切り株の椅子に腰掛けた。一回りか二回り位大きな切り株はテーブルがわりとなっていて、そこにティトレイ製作のご飯が置かれている。アニーが手伝って食器を配り、既に食器の行き渡ったマオはスプーンと食器を叩き楽器のようにして今か今かと料理が来るのを待ち、急かす。 「早く、早くティトレイー!!」 「分かってるって、ちょっとぐらい待てよマオ」 いつもの光景なのだが、見ているとなんともまぬけな感じがするのはこの際ほっておこう。と思いつつも不思議と口が緩まって、思わず顔が微笑んでしまうのであるが。 そんな私に向かって、こちらに気が付いたティトレイが話しかけてきた。 「何してんだヒルダ。飯だぞ?ほら、こっち来いよ」 「…え」 見ている分には微笑ましいのだが、自分がその中にまざるのはなんだか気恥ずかしい。ちょっと前まではこんな会話なんか到底しなかった自分、まだ慣れないらしい。ほんのりと顔を火照らせながら、ヒルダが戸惑っているのを見ると、どうしたことかティトレイはこちらに近寄ってくる。 そしてあろうことか、ティトレイは私の腕をいきなりとっていたのだ。 「ちょ…何するのよ」 吃驚して腕を払おうとしたけど、以外にも力強い手から簡単には逃れられなかった。そのままぐいぐいと引っ張られて、皆の方に連れて行かれる。 「飯だって言ってるだろ。食べない気か?駄目だぞ、飯食べなきゃ力出ないんだからな」 まるで保護者のようにティトレイがそう語るので、なんだか気に喰わない。それに自分の気持ちなんか全然分かってないこの鈍感男に、こうして言われるがままにされるのも 年上の女性としてなんとも苛立ちがふつふつと湧き上がる。 「違うわよ、そんなんじゃなくって」 思わず顔を顰めながらそう口に出すと、その時にはもう既遅し、皆の所へと着いてしまった。マオは既に料理にかぶりついていて、美味しそうにたいらげている。その様子に微笑みながら、アニーもゆっくり、静かに料理を口に運ぶ。 …ヴェイグとユージーンもいたって静かだったが。いや、黙々、というべきか。 その中に無理矢理入り込まれた自分、皆は慣れているのかまるで気にしなかったけど、やっぱり気恥ずかしい。腕を動かして振り払おうとするが、それより先にティトレイが動いた。 「ほーら、座れって」 「ちょっ…、ティトレ…」 まだ握られていた腕を思い切り引っ張られて、切り株の椅子に座らされる。しかもそこはここまで自分を連れてきたティトレイの隣、なんても苛立ちが隠せない。 「あんたね、さっきから無理矢理過ぎなのよ」 そう反論したけど、ティトレイは笑顔を崩さずに今日の昼ご飯、チキンスープを入れた皿をずいと私に渡してくる。 私の言葉なんか流されて、何事もなかったかのように隣に座り込んだ。 「………」 なんか反論してやりたかったけど、料理から立ち込める良い香りに負けたので、この時は引き下がった。 皆食事が終わって、ティトレイが一人食器を洗っている頃、私はその場に赴いた。 ゆっくり、ゆっくりと、ティトレイの背後から近寄っていく。 …まだ気付かれない。水の音が邪魔をしていると言う事もあるのだろうけど、なんてったって無防備だ。 このままさっきのお返しにとひっぱたいても全く気付かれなさそうだ。思わず手を振りかぶろうとしたけど、食器にダイブしても後々が困るから止めて置く。 …そのかわりといっちゃあなんだけど、ヒルダにある事が思いつく。 前々から出来なかった事で、一度でもいいからやってみたい事。 「…ちょっと。ティトレイ。」 そう言いながら、ティトレイの肩をぽんと叩いた。 「…うおうっっ?!」 ティトレイは凄く吃驚して大きく体を跳ねさせた。そのリアクションの大きさにこっちまでちょっと吃驚してしまったけどとりあえず気にせずにそのままティトレイを見据える。 そうしていたら、ティトレイは流れ出す水も止めずにこちらに振り向いてきた。 「…って、ヒルダか、なんだ吃驚させんなよー」 口の端を思い切り持ち上げて、微笑みながらこちらに言葉をかけてくる。さっきまで凄い吃驚していたくせに、一分もたたないうちに表情をコロコロ変えられるこの百面相は興味深いものだ。そんな風に思いながらまじまじとティトレイを見ていたら、ティトレイは首をかしげて声を続けた。 「なんだよヒルダ?俺の顔に何かついてるのかー?…あっ、もしかしてもう腹が減ったとか!?今食べたばっかなんだから我慢しろよー!」 「…違うわよ」 どうやったらそんな事が思いつくのか、呆れて仕方ない。まあ誤解されても困るので一応否定しておく。 「無理すんなって!…あーなんならデザートくらいなら作ってやってもいいぜー?」 「だから違うってば」 一度思い込んだら中々人の言う事を疑わない奴、思い込みが激しいと言うかなんと言うか。もう一度否定したがティトレイはまだ自分がお腹がすいたのだと勘違いしているらしい。どうしたものか、と考えていればまだティトレイはデザートは何にするかだとか、食器洗い終わった後でなーなどと勘違いをそのまま進行させている。…全く持って困ったもんだ。 でも、さっきみたいに引き下がるのも悔しいので、いっそこの男に思い知らせてやりたくなった。 …そろり、と手を差し出す。 「ちょっと」 「…ん?」 がしっ。 ティトレイの両頬に手をかけて、思い切り引き寄せる。ティトレイが屈む形になった状態で自分の顔に引き寄せた。 さっきまで洗う皿にしか瞳を向けていなかったこいつの顔が真ん前にあって、凄い吃驚した顔をしているのがなんとも面白い。これだけ近ければ私がお腹なんかすいてないって事分かるかしら、なーんて事を考えながらこいつの顔を観察した。 「…ヒ…ルダ、ちょ、お前何やってんだよ!」 ティトレイの声が聞こえたけどまるで無視した。前の罰とでも思って、とニヤリと口の端が自然に持ち上がる。今までまともに見る事はなかったが、わりかしいけている方だと思う。手をかけている頬は意外と柔らかくて、餅肌男なんだなと少しばかり思った。 もう食器なんか見ていない、ティトレイの目はこちらに注がれている。自分の何処を見ているのか疑問に思いつつも、自分をさっきまで見ずに話していた時の事を考えると誇らしい気分になった。 そこでふと気付いたティトレイの異変に、ヒルダは思わず目をやった。 「…赤いわね」 なんとなく口にした言葉に、ぼっ、とティトレイが益々頬を赤くした。 「あっ…赤くなんかないやい!」 反論すればするほど赤く変色していく頬に、鈍感なコイツが少しでも私を見て意識しているのかしら、と思いふつふつと笑いがこみあげるのがもどかしい。 「強がらないの」 さっきまで、年上ぶったように自分に説教してくれやがった彼に、まるでお姉さんのように促してやればうっ、と言葉がこもるような声がしたので気分がいい感じがした。 …まあ、悪戯もここまで、とゆっくり手を離す。 名残惜しいとも思ったが、一応自分の意志くらい分かってくれたでしょう、と考えた。 「…分かった?」 まあ、一応確認してやる。 「…え、あ…何が?」 さっきのがまだ離れないように、ボケーッとしながらティトレイが声をしどろもどろに返した。もう、と思わず声を漏らして背伸びして顔を近づける。 「まだ分かってないんだったら今度は近づけるだけじゃ済まないわよ」 「…はあっ?!!」 やっと火照りがとれてきたらしい頬にまた火が付く。百面相の表情のまた新たな一部を見れたようで面白い。 クスクス、と笑みを漏らしながら背を向けた。 「じゃあね」 「…なんだったんだよ」 水音だけが残るそこに取り残されたティトレイは、ただそれだけ呟くだけしか出来なかった。 それからと言うものの。ティトレイの視線が更によくこちらに向けられる様な気がしてならなくなった。 ティトレイの方をちらりと向いてやれば顔を赤くしてパッと顔を背けるし。 …私としても、面白いのでわざと近寄ったりもしたくなったりするし。 今ふいと顔を背けたばかりのティトレイに近寄って、こう囁く。 「どうせわかりやすいんだから、見るならもっと近くで見ればいいじゃない」 「え」 呆気をとられたような顔をして、すいと通り過ぎた私をティトレイが追いかけてきた。 「どど、どういう意味だよ!!」 「さぁね。…そのまんまよ」 「…え」 それ以上はティトレイは追いかけてこなかった。…すれ違い様に見た、赤くなったティトレイの顔だけは離れなかったけど。 自分の顔までもが熱くなるような感覚がしたので、逃げるように離れた。 …気のせいじゃなくて良かった。 そんな事、こっそり思ったのは内緒の内緒。 …二度目の恋も、そう遠くないかもしれない。 …なんて、ね…。 あとがき… リバースでは一、二を争う大好きCPのティトヒルです! この二人はゲームやる前から大好きでした。やっと自分でティトヒル話が書けて幸せです。 …でも凄いティトレイがヘタレだ。(あ まだリバース初心者なので、色々世界観おかしいですが、今回はこの辺で。 ブラウザバックでお戻り下さい。 |