ゴーストパニック! 後編



「ぎゃ〜!!ななな、なんでちかこれは―――――?!!!」

まさかこんな事になるだなんて誰も思っても見なかったのに。





ゴーストパニック! 後編





幽霊船に乗り込んでしまった聖剣の勇者一行は、この怪奇現象の真相を調べるべく、幽霊船内を探索していた。その時に見つけた隠し部屋の奥にある本をシャルロットが触れ、中を読んだ途端にマタローと名乗る幽霊が現れた!そして、その幽霊が消えた途端にシャルロットの体までもが幽霊と化してしまったのである!
「…透けてるな…」
デュランがシャルロットをまじまじと見ながら言った。途端に「こんな時に落ち着いて見るなでち!」と怒り満点な声が反論として返ってきたが。
と、そこにしゅうっとフェアリーがデュランから出てきた。
「これはさっきの人に呪いを移されたのね。この呪いをかけられたら、他の誰かに呪いを移さないと一生この船から出られないよ。」
「ほほーう、それは良い事を聞いたでち!」
フェアリーの説明を聞いたシャルロットが、不適な顔をしてそう言った。
! と5人は身の危険を察知して一斉にシャルロットから離れるべく猛ダッシュで逃走した。
「あ!みなしゃん、酷いでち!シャルロットはこんな仲間を持ったと思うと、情けないでち…」
よよよ、とシャルロットは弱弱しく尚且つわざとらしい泣く仕草をした。まるで自分は悲劇のヒロイン、とでも称するかのような演技っぷりだ。それを見てフェアリーは溜息を一つした後にツッコミをかける。
「どっちもどっちだと思うけどね。あなただって、一瞬仲間を犠牲にしようと思ったでしょ?」
「てへへ…バレたか…」
さっきの演技は何処へやら、ケラケラと小さく笑って誤魔化す。その間に顔を少々呆れさせながら5人が帰って来た。
「―――で、どうすればその呪いとやらが解けるんだ?」
デュランが呆れ顔で言う。この雰囲気では流石に怖くなくなったのか、アンジェラは既にデュランの手を離している。(当たり前と言ったら当たり前なのだが)
「兎に角、呪いの素となるものはこの船の何処かにある筈よ。それを残った5人で探しましょう。」
フェアリーがそう言って、皆はうんと頷いた。それを確認した後、フェアリーは再びデュランの元へと戻っていった。そして、皆が行こうとしたその時。
「………ちょぉ―――っと待つでち!!あんたしゃん達!!!」
なんだ、と疑問符を浮かべながら皆が振り向いた。
「どうしたのよ?シャルロット。」
一定の距離を保ちつつ(やっぱりまだ不信感があるらしい)アンジェラがそう問いかけた。
「あんたしゃん達、このか弱いれでぃを一人置いていくんでちか?!」
「…別に透けてるからモンスターからの危険は問題ないでしょ。」
アンジェラがツッコむと、シャルロットはぶぶぶぶぶんと首を突風の速さで横に何度も振る。
それを見たホークアイの頭にあるものがピーンときた。
「…もしかして、シャルロット、一人になるのが怖かったりして」
「ギクッ!…あああああ、あたしゃんがそんな、こここここ、怖いなんて、ああああああある筈、ないでちよおおおおおおおっ!!!!!!!!」
思いっきり否定しているが怖いのは丸分かりだった。デュランは既に呆れて壁に手をついている。
「…わかったわかった。つまりは誰か護衛に置いとけって言うんだろ?」
「そうでち。デュランしゃんは聞き分けが良くて偉いでち」
(…お前に偉いって言われてもなあ…/←でも呪い移されるの嫌だから反論出来ない)
「で、誰置いていくの?」
デュランの背後からひょこっとアンジェラが顔を出した。「それが問題だ」とデュランが返す。
「じゃあオイラが残る。今は夜、力出せるし、大丈夫」
「よし決定じゃあ行くぞ」
(…スパッと言ってのけたなホークアイ…そんなに早く呪いの存在から離れたいのか…)
デュランがかなり幻滅したような目でホークアイを睨んでいたがどうやら当人は気付かないらしい。さっさと呪いから離れるべく部屋を出て行こうとしている。
「では行って参ります。シャルロットもケヴィンもお気をつけて」
「はいでちー」
「わかったー」
リースとお別れの挨拶を交わす所はなんだか和むような気がした。さっきのホークアイと比べれば当たり前なのだが。…まあどうせ自分も行かなければならない。既にアンジェラが「早く早く」と催促している。ひとつ息をつき、髪をいじって首を振ってから、その後を追った。
「ケヴィン、呪い移されるなよ」
「大丈夫、シャルロット、そんなことしない」
「………」
そんな仲間を信じきっているケヴィンの背後で、シャルロットがその信頼を裏切るかのごとく黒い表情でフレイルを構える姿は見ない事にした。(出来れば早くこの現場から離れたいと必死で思った)






「…さ〜てと、呪いの素は何処にあるのかな〜?」
ホークアイが回りを見渡しながら呟く。夜目が利くのでこう言う場面ではうってつけだ。
その後ろにリース・アンジェラと続く。アンジェラはまた怖くなってきたのかリースの肩を掴んでいた。
デュランはまだ最後尾に居たが、後ろを守れると言う意味もあるので特に反論もなくついていっている。
軋む階段を上がって、ホークアイが丁度階段の段を全て上がり終えた時、デュランは異様な気配を感じ一気に先頭の方へ走った!それと同時に剣を鞘から抜いた次の瞬間、恐ろしい形相のゾンビの毒爪と、デュランの剣とが乾いた金属音を出しながらぶつかり合っていた。
「敵だ!援護してくれ!!」
デュランが叫ぶと、皆も武器を装備し、一気にモンスター達を畳み掛ける。彼方此方で武器が敵を貫く音が聞こえてきた。
そしてその後ろで呪文を完成させたアンジェラの声が響く。
「ホーリーボール!」
光が消えた後にはモンスター達の影は消えていた。ふう、と一息ついて武器を降ろした。
「危なかったですね。デュランさん、助かりました」
「いや俺は別に…」
「何だよ謙遜しちゃってさ!回りを見てた俺より先に気付いた癖に〜」
ホークアイがうりうりとデュランにふざけ半分で話しかけてきた。デュランは少々照れながら「止めろ」と言うがからかわれて機嫌を悪くしているのが丸見えだ。それにつられて、アンジェラとリースもクスクスと微笑む。
が、その4人の背後にゆらりと大きく恐ろしい影が映った。
「?!!!」
4人が気付き、振り返った時にはもう遅かった。ゾンビの上位種、グールの長い爪が襲い掛かってきたのだ!
なんとかかわしたものの、行き場を失ったそのグールの爪は床にバスン!と勢い良く刺さった。すると、幽霊船に積もりに積もっていたのだろうか、大量の埃がぶわっと宙に舞って視界を隠したのだ!
「わっぷ…ッ!前が見えねぇ!」
すぐ隣に居た為か幾分姿の見えるアンジェラが、いきなり叫びだした。
「もう嫌ぁ!」
そして思い切り杖を天に掲げると、その先端に光が集まっていく。デュランはその真意を直感した。
「ちょっと待て、こんな時に魔法使ったら…」
「――――ホーリーボール!」
光で前が眩しくて思わず腕で目を庇う。次の瞬間グールの断末魔が聞こえた後、ぶわっと埃とアンジェラの魔法が一気に爆発した!
叫び声すら光の音に阻まれる中、体が宙に浮き吹き飛ばされたのを感じた。






「…ん。ホークアイさん。起きて下さい」
「………うーん…」
体が弱い力で揺さ振られるのを感じて、ホークアイは目を覚ました。まだあまり動かない脳を必死に動かすと、そう言えばさっきあの爆発に巻き込まれて吹っ飛んだんだっけな、と思い出す。
ゆっくりと起き上がった後、周りを見渡す。目の前に見えたのは、此方を心配そうに見つめるリースの姿だけ。
「…デュランやアンジェラは…?」
「…はぐれてしまったようです。」
リースはその後すぐ申し訳ありません、と付け足した。正座した状態で、ふいと小さく俯いた。
「リースのせいじゃない。あれは事故だよ事故」
元気付けるようにリースに向かって微笑む。でもまだリースはその申し訳なさそうな表情をしたままだった。
「それに二人を探し出して合流しなきゃならない。さ、リース行こうか?」
立ち上がって、リースの方に屈むと手をすっと差し出した。リースはそれに気付くとハッとしたような顔をした。でもすぐ、少々赤面しながらおずおずと手を取って立ち上がった。
「―――痛ッ」
「え?!」
いきなりホークアイが呻いたので、リースは思わずホークアイを支え、彼の顔を窺った。ホークアイの顔は痛みに歪んでいる。ふと、彼の抑える手の方を見ると、右肩から血が滴り落ちていた。
(もしかしてさっき、襲われた時に…) リースにある考えが浮かぶ。ホークアイも同じ事を考えていた。 あのグールの攻撃は避けたと思っていた。が、迂闊にもホークアイは少々受けてしまっていたらしい。
「兎に角何処かで手当てしましょう…」
リースがホークアイを引っ張って、丁度見つけた部屋に入る。モンスターも居なく、尚且つ就寝に使うベッドがあった。そのベッドにホークアイを座らせ、自らもその隣に座り傷の様子を見る。ホークアイの手をよけて、傷の具合を見てみる。明らかにひっかかれたような痛々しい傷が目に入った。
とりあえずかかっているかもしれない毒の除去の為と、回復を早める為にまんまるドロップとプイプイ草をホークアイに渡し、使わせる。それから道具袋にあった白い布を破くと、その傷口を押さえるために彼の肩に巻きつけた。
「…これで、大丈夫だと思います。」
「ああ、有難うリース」
ホークアイはその手際の良さに関心してしまった。流石はアマゾネス軍のリーダーとだけあり、傷の応急処置などはお手の物と言った所か。ホークアイは無意識のうちに首をうんうんと縦に振り、一人納得の仕草をしている。
やっとリースもホッとしたようで、心配症の顔は解けている。ホークアイはリースの顔をチラリと見た後、クス、とひとつ微笑んだ。リースに「何を笑っているのですか?」と聞かれたが、生憎答えられる訳はない。ただ単純に、この雰囲気につられただけ…なんて。
と、そこでいきなりひゅうんと奇妙な音がしたと思うと、周りは何故かモンスター達に囲まれていた。
「なっ!なんだ?!」
「もしかしてこの部屋…罠部屋…」
「なんだってぇ?!くっ、とにかくこいつら倒そう、リース!」
チャキ、と武器を構えて敵にダメージを与える。この狭い部屋ではどうにも動き難く、ホークアイ持ち前の素早さが半減してしまう。チッ、と舌打ちした後、体をぐるりと半回転させ、その勢いで襲いかかろうとしていたスペクターに回し蹴りをくらわした。丁度良く部屋のドアを割って廊下の方へ飛んで行く。それを見逃さず、敵が着地した瞬間にトドメの一撃をダガーで刺した。
すると、跡形も無くスペクターの残骸は霊魂として空に上っていった。ふう、と一つ息をつく。
「きゃああっ!」
リースの悲鳴が聞こえた。不味い、離れてしまった!と気付き部屋に戻る。リースが残ったモンスター…グールとチビデビルに壁の端に追いやられ、ピンチに陥っていた!
「リース!」
一気に走ると、その勢いに任せチビデビルの腹をダガーで斬りつけた。それでチビデビルは霊魂として消えていく。そのまま後ろにバックステップして、リースの前に移動する。
「リース、一人にしてすまない」
「いえっ…、大丈夫です」
しかし、チラリと後ろを見た時には、リースはグールの毒霧を受けたらしく顔が青ざめていた。戦うのは厳しい。素早く道具袋を渡すと、それで解毒しろ、と踵を返し、それからまた前を向く。
グ、とダガーの塚を握り締め、じりじりと迫ってくるグールを睨み付けた。目の前に、物凄い形相をしたグールが真っ直ぐに瞳の中に映し出されてくる。しかし、決して恐れなどなかった。
「…リース、君は俺が守るよ」
絶対に守ってみせる――と、ホークアイは誓う。
もう、仲間を失うのはたくさんだ。二度とそんな事はさせやしない。
そして、彼女を失うのは、きっともっと辛いものだと思うからこそ―――
刹那。体を回転させ、ダガーが空を斬った。両手に持つダガー二つが、勢いを保ったまま敵に吸い込まれるように連続で刺さっていく。その際に舞った埃が消えた後、そこにモンスターの陰はなかった。
ふう、と息を一つついてホークアイはダガーをしまった。それから、ゆっくりとリースの手を取り、立ち上がらせる。
「……有難うございます…」
「なーに。これ位どってことないよ」
笑顔で言う。が、リースは弱く微笑むだけだ。どうしたのかと、ホークアイが自らの体を屈め、その表情を窺った。――その時、ふっとリースがホークアイの手をとり、自らの頬に寄せる。
「…リース?」
「…本当に、有難う…ございます………」
涙目でリースは目を瞑る。ああ―――強がってるけど、怖かったんだ――と直感した。
「大丈夫、俺が居るから、リース」
まいったな、と心の中で呟いてホークアイはリースの肩を抱いた。
薄暗い船の中で、眩い光が見えた気がして―――






「…いってぇ…」
いつつ、と先ほどの吹っ飛んだ際にぶつけたと思われる頭がさすり、デュランは重い体をゆっくりと起き上がらせた。まだ頭や背中がズキズキ痛む。周りを細い目で見渡すと、仲間はいないようだった。はぐれちまったか、と思わず舌打ちする。
はた、と崩れた瓦礫の後ろにこの場に相応しくない色が見えた。濃い紫色をした長い髪。誰だか、なんてデュランには愚問だ。――アンジェラだ。
ゆっくりと近づき、その細い体を揺すった。どうやらまだ気絶しているようで。
「…おい、起きろ」
「…うーん…はっ」
起きたか、とデュランは呟く。が、アンジェラは目を見開くと同時にずささっと後ずさった。
事の状況が分からないデュランは目を丸くする。
「あ、あ、あんたまたなんかヤラシイ事しようとしたんじゃ…」
「ばばばば、ばかやろーっ!!俺がそんな事するか!つか、またってなんだ、またって!!!」
顔を真っ赤にしてデュランが反論する。出会いが出会いだからしょうがないが、俺はそんなに信用ないか!と思わず心の中で絶叫してしまった。
「…冗談よ。兎に角、早く行きましょ。皆と合流しなきゃ」
むくりと素早く起き上がると、先に行くのかと思いきや…歩いて着いた先は、デュランの手。
「…何」
「…あんたが前を歩くの」
あ、そっかコイツ此処怖かったんだっけ…と半ば呆れ顔を気付く。その顔に反応してアンジェラが「何、その顔」をツッコんできたが、無視して歩き出す。
薄暗い船内をゆっくり歩いて行くと、階段にさしかかる。そのままそれを上っていく。が、さっきやられていたように腕をがっしりと掴まれたままではなんと動き難い事か。思わず顔を顰めた。
(コイツ相当な怖がりだな…しっかし歩き難いったらありゃしねぇ)
こんな事口に出したらロッドで頭に天誅をくらわされる事間違いないので決して言わないが。
階段を上がり終えて、何やら青い光を放つ窓があった。デュランは気にせずすいとそれを無視し、そのまま続く廊下を歩こうとする。が、その窓が居様に気になったアンジェラはその窓を擬視していた。と、その時…
なんと、青い光の奥から骸骨がヒュオー…と現れたのだ!
「…イヤァァァアアアア――――ッッ!!!!!」
思わず絶叫してしまい、前のデュランの耳にクリーンヒット。案の定耳がキーンとなってしまい、思わず身悶える。
「…なんッだよ!!五月蝿いな!!」
怒りを露にしてアンジェラの方に振り向く。が、そこに居たアンジェラの表情は恐怖に支配され、青ざめていた。
「みみみみみみ見たの!!あの窓の向こうに、骸骨が現れたのよ!!」
「ハァ?!お前夢でも見てたんじゃねぇの?!」
「違うわよ!確かにこの目で見たのよ!」
自らの目で見てない事にはどうも信じれない、と言う様な顔をするデュランに、アンジェラが言い放つ。
「…ホラ、一緒にこの窓見てて、私だけ前向くから。その時出る筈だから」
「へいへい」
やる気のなさそうなデュランをぐいと引っ張り、あの窓に向けさせる。そして、自分だけ前に振り向いた。
……が、骸骨もあのヒュオーと言う怪しい音も何も怒らなかった。
「…何も起こらねぇぞ?」
「え?!な、なんで?!」
「やっぱり見間違いだったんだよ。俺は先に行くぜ」
「そんな筈は…」
デュランが廊下を歩いていこうと前を見たのと同時に、アンジェラが窓の方を向く。するとまたあの骸骨がヒュオー…と不気味な音を立てて現れたのだ。
なんで私だけに見えるの…?!なんで…?!と、アンジェラの脳内はパニック寸前だ。
そして、ブツッと何かが切れる音がした。
「…いやぁぁぁぁああああ!!!!もうこんなとこ嫌――――ッッッ!!!!!!」
「何だよ……あでっ!」
怖さでもう耐え切れず、助けを求めるかのように、何だよと丁度此方を振り向いたデュランの腹に体当たりしてしまったのだ。
勿論その勢いにデュランは耐え切れず、そのまま前方にドスン!と音を立てて転げ落ちた。
「もう嫌!こんな怖い所もう嫌――ッ!!早く出たい――ッッ!!!」
デュランの胸板に顔をすり寄せたまま泣き喚くアンジェラ。その様子をデュランはただ朦朧とする視界の中で見るしかなかった。(後頭部打ったために頭が回らない模様)
物静かな船内に響くのはアンジェラのソプラノの泣き声だけ。ずっと木霊するそれを聞きながらなんとか後頭部の痛みが治まりつつある頃、デュランはいい加減泣き止んでくれないか…とアンジェラの方を見た。
が、そこでデュランはある事に気付く。
この状態、傍から見ればどう考えても 女 に 男 が 押 し 倒 さ れ て い る 光景にしか見えないのだ。それに気付いたデュランは一気に顔を赤くする。慌ててアンジェラを引き離そうとするが、仰向けの手前、この焦りようでは力が上手く出せない。
「お…落ち着けアンジェラ……と、兎に角避け…」
「うわぁぁぁぁんっっ!!!」
が、お構いなしにアンジェラは泣き続ける。彼女はこの状況にてんで気付いていないらしい。こうなるとデュランにしてみればどうしようもない。起き上がれないわ、顔が熱くてしょうがないわ。…残された方法、ただ一つだけ。泣き止むまで待て。
(全く……冗談じゃねぇぜ…)
結局アンジェラが泣き止むまで待つ破目になったデュランであった。
数分後。アンジェラが漸く泣き止んだ。まだ嗚咽を残しているものの、幾分落ち着いたようだ。
「……落ち着いたか?」
「うん……っく、ひっく…」
「じゃ、そろそろ避けてくれねぇか?いつまでもお前に押し倒されたままじゃ敵わねぇ」
「!!!」
そこでやっとアンジェラは事に気付いたようだ。ぼぼっと音が出るくらいに顔を赤くしてずざざざと思いっきり退く。その行動にデュランは呆れ顔をしながらゆっくりと起き上がった。
「あーあ、服がお前の涙でずぶ濡れだぜ…」
「う、五月蝿いわね!」
「…っと」
アンジェラがいきなり何かを投げつける。それをデュランは素早くキャッチした。そこで投げつけられたのは、どうやらデュランの着替えのようだった。
「…早く着替えなさいよ。早く行かなきゃなんないんだし」
「…へいへい。そーだな」
ふう、と息を一つついた後、アンジェラの方をチラリと見た。隠しているつもりなのだろうが、赤面がバレバレだ。
「手間のかかるお姫様だな、全く」
災難だったけど、こんな珍しい彼女の姿を見れたこと、覚えて置こう。そう思うデュランだった。






この後、甲板で呪いの素であるゴーヴァを倒し、皆と合流して精霊シェイドの力を手に入れた一向。がしかし、この後のシェイドの言葉によって彼らの状況は変わる。
「魂が開放されたので、存在の意味を失くしたこの船も消えてしまうようだ…」
「「「「「「ええええええぇぇえええ―――――?!!!!」」」」」」
シェイドが思いっ切り平然と物騒な言葉を言ってのけ、絶叫する一向。が、無情にも次の瞬間船は瞬く間に消え、一行は夜の海に投げ出された。そしてこの後の彼らの運命と、幽霊船の中で芽生え始めた思いの行く先を知るのは、また別のお話……。










あとがき。
無事、完結しました〜!フッ、ホークリの時点で本気でこの話終わらないかと思った…滝汗
前編はギャグ中心だったので後編ではやっとCP要素いれました。でもびみょ。
良い小説が描けるように精進したいです。汗



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