ゴーストパニック! 前編



恋愛なんて、何時始まるのか分からない。

例え意識してなくても、きっと、始まったのはそこから――――





ゴーストパニック! 前編





ローラントをナバールから開放し、バイゼルに戻ろうとした聖剣の勇者一行。 いつもならかなりお財布に痛い額を払って船に乗らなければならないのだが、何故か今回の乗船金は0ルク!つまり、無料。
こりゃーやったね、とVサインを笑顔で示すホークアイや、これで買い物の分のお金がが少し楽になりますねと安堵するリースや、無駄に機嫌を良くし大はしゃぎするケヴィンとシャルロット。勿論それはアンジェラも例外でなく、「これで次は少しでも豪華な宿に泊まれるのかしら?」などと呟いていたもんだ。
まあ、喜ぶのも当たり前なのだが…、とこの6名のほぼリーダーであるデュランは思った。
(でも、なんかこの船おかしいんだよな)
密かにそう思う。だいたい0ルクと言うのもおかしかったが、何より船員の態度がだ。
いつも乗客を励ますかのごとく大声で活動する海の男達はまさに元気の象徴。その者達の態度が居様に、おかしい。と言うか暗い。
この船に乗る時も『船が出るよ……何人でも0ルク…乗って行け…』と言ういかにも怪しい感じだった。
財布が寂しい事(パロで装備・アイテムを整えた為に持ち金が減った)と、他に乗れそうな船がないと言う事で乗ってしまったが、本当にこんな船に乗ってよかったのだろうか。デュランの心配は尽きない。
が、そんな心配をよそにはしゃぐは財布があーだこーだと金銭面についてだけ気にするわ更には宿がどうだとか言うやらで…なんだか自分だけがこの雰囲気を気にしている様な気がしてきた。単純に自分が気にしすぎなのか、それとも皆が疎いのか。それすら今のデュランにとっては難題だ。
(やっぱり言った方がいいのかこれは?) が、しかし…ずっとこのはしゃぎようのを見ている者としては、わざわざこの雰囲気を壊す気力がある訳もなく。
そして帰ってくる言葉もだいたい予想がつくので結局黙っておく事にした。
結局この日一日、デュランの悩みは収まらなかったと言う。






日が落ち、夜も更け、皆が寝静まった頃。既に聞こえるのは皆の寝息と、波の音だけ。
既に深夜11時を過ぎた。もうすぐ12時になる。
その数分前に、デュランはゆっくりと目を覚ました。眠気で重だるい体を起こし、ぶるぶると顔を横に振る。
「…っかしーな。そろそろバイゼルに着いてもいい頃なんだが…」
乗るのが遅かった事もあるが、パロとバイゼルの距離はそんなに遠くない。夕方に乗ったとしても既に着いてる筈だ。なのに何故こんな時間になっても着かないのか……皆が寝静まる中、壁にかけてあった時計をちらりと見た。
そこで、ぴったり針が12時を指した。



ギャアァァァァァァアアアアア―――――――!!!!!!



「おわっ?!なんだ今のは?!!」
いきなり耳に届いた異様な叫び声に吃驚して眠気が一気にぶっ飛んでしまった。
「ぎょ!なんだなんだ?!」
「キャア!変な声が―――!!」
当たり前と言うかなんと言うか、今の叫び声に皆起きてしまったようだ。
「なんなんです今のは…?!」
リースが未だに目を丸くしたままで近くに居たホークアイに尋ねる。
「…いや分からない…。でもあれはかなり遠くから聞こえてきたような…」
流石はシーフのホークアイだ。あの一瞬、しかも寝起きの癖に何処から聞こえてきたのか大体察知しているようだ。
「…デュランしゃん。デュランしゃん。」
つんつん、と腰の辺りをつつかれて後ろを見ると、シャルロットが呆然とした表情で此方を見ていた。
「どうした。」
「…今の騒ぎにかかわらず寝ていた強者がいるでち。」
そして指差された先には何もなかったかのように爆睡しているケヴィンの姿。
「……………」
とりあえずデュランは無言で硬直した後、ゆっくりとケヴィンに近づいた。
「…………」
シャラン、と金属がこすれあう音がしてデュランが剣を抜いたのを確信する四人。
「まっ、待てデュラン!早まるな!普通に叩き起こそう!な!!」
叩き起こすのもどうかと思うが、早まりすぎたデュランの行動を嗜め、ホークアイがかわりに必死で(再びデュランに剣を取り出すのを恐れて)ケヴィンを起こしていた。隣ではリースが哀れそうな表情で見送っている。
「…ねーそれよりも。今の声が何か確かめないの?」
一部始終を冷静に見守っていたアンジェラがそう声をかけた。デュランは何もなかったかのように冷静を取り戻し、「そうだな」と納得の声を上げる。
やっと起きたケヴィンを半ば無理矢理ホークアイが引っ張りながら、6人は部屋を出て、声の正体を見破るべく廊下を見渡した。
「……特に変わりはないみたいですね」
リースがそう呟いている。デュランは一番先頭に立ち、数歩前に進んだその時。
ガシャーン!
「おわっとっ!なんだ?!」
いきなり一行の後ろからまるで皿が勢い良く落ちて割れたような音が響く。
が、案の定後ろを見ても皿の残骸など欠片も落ちていない。
「ぶえぇぇぇええ!しゃしゃしゃ、シャルロットは怖いでち!もう嫌でちぃぃぃいい!!!!」
ああ、一番お子ちゃま(実際言ったらフレイルで確実に殴られる)なシャルロットが恐怖に耐え切れず泣き出してしまう。酷く嗚咽を出しながら泣き喚くシャルロットを、リースが慌てて傍に寄り泣き止まそうとしている。
「…兎に角、まだ何も分からねぇ。もう少し先に進んでみようぜ」
さっさと先頭を歩き始めてしまうデュランを必死に皆が追いかける。
「ちょっと待ってよデュラン!ちょ。ちょ、置いてかないで!」
アンジェラが必死に追いかけて、隣に来たかと思うとがしっと腕を掴まれた。
「な、何してんだお前…」
が、横を見ると涙目で回りを挙動不審にうろうろ見渡している。ああ、怖いんだと直感した。
「デュラン待て〜…お、俺がケヴィン背負ってついてってんの忘れるな〜………」
半ばまるで亡霊のようにホークアイが呻く。ケヴィンはまだ眠気が止まず、ふらふらと危ないようなのでホークアイがほぼ背負った形になっていた。思わずデュランはああ忘れてた、と言うような顔をしてしまったため、「お前俺達の事忘れてただろ!」と案の定つっこまれてしまった。
流石に可哀想になって来たので歩調を遅くし、ゆっくりと歩き出す。それにアンジェラに掴まれたままでは歩き難いのでこの上ない。
全く、こいつらと付き合うと苦労するなと思いつつ歩を進めた。



それからつきあたりの階段を上り、部屋をいくつか過ぎた後。



ギャアァァァァァァアアアアア―――――――!!!!!!



「うわっ!またかよ!」
「いやぁぁぁああああっっ!!!!」
アンジェラが思いっきり叫んで腕を頼るように強く握り締めた。相当怖かったのだろう。
「なんなんだよもー!」
ドサッ
「…あ」
さっきの「なんなんだよもー」の際に両手をケヴィンから離してしまった為、見事ケヴィンが床に落ちてしまったらしい。
「……んー?いたい……」
漸く起きたようだ。全く今までの事を記憶していないようだ。
「……さーん、にーい、いーち…」
「わ――ッッ待て待て待て待て待て――――ッッ!!!!」
危うくデュランが剣を振り被った所でホークアイが止める。アンジェラに片手をとられているためデュランが利き手と反対で振り被っていなければ止められなかっただろう。何せカウントダウンまでしてその声が上ずっていた(つまりそれほど機嫌が悪い)のだ。ホークアイは全身全霊を込めて安堵した。
「…あの。皆さんちょっと宜しいでしょうか?」
「え?あ、リース、どうしたんだ?」
いきなり呟いたリースにホークアイが声をかけた。
「あの…この船って、もしかして幽霊船じゃありませんか?」
「え」



「「「「「幽霊船?!!!!」」」」」



見事にリース以外全員の声がハモった。ひときわシャルロットが震えだす。
「もういやでち!シャルロットは、おおおおおおうちに、かかかかか帰りたいよう!!!」
シャルロットがぶわーと泣き出す。慌ててデュランがまるで手のかかる子供の親になった気分で泣き止ませている。
(…ちょっと待って…)
ひゅいっ、とデュランからフェアリーが出てきた。どうしたのかと皆の視線が集まる。
「…微かに精霊の気配を感じるよ。でもとても弱いの…」
「じゃあ、この船の何処かに精霊が居るって事か?」
デュランが問う。フェアリーは首を横に振った。
「分からない。もっと詳しく船内を調べてみる必要がありそうね…」
それを聞いて皆がふう、と落胆した。シャルロットは相変わらず少々嗚咽が混じっていたが。
「?! 何かいるよ!気をつけて!」
フェアリーはそう叫ぶとデュランの中に消えていった。残された6人がばっと後ろを見ると、そこにはモンスターが居た!
「なんでモンスターが居るんだよ!!」
「幽霊船だから幽霊が出てくるんだろ?」
呑気な声を上げてホークアイがナイフをくるくると手の上で回している。デュランはがしがしと頭をかいた。
「そうじゃなくってだな…ええい、兎に角迎え撃つぞ!」
次の瞬間、皆が威勢良く武器を構えた。次から次へと襲い掛かる敵を薙ぎ倒していく。
デュランとケヴィンが最初に切りかかり、弱ったモンスターにリースとホークアイが前を援護しつつ確実なトドメをさす。その後ろでシャルロットはいつでも皆を回復出来るようにフレイルを構えている。その隣で、アンジェラが体に光を纏い、詠唱を施した。そして、一気に敵にそれをぶちかます!
「ホーリーボール!」
白く光る球が敵を一気に包んだかと思うと、次の瞬間には敵を中から破裂させるように光が周囲に溢れた!
その光が消えた頃には、だいたいのモンスターは消えていた。
「よし!一気にいくぞ!」
デュランの掛け声に続き、敵を一気に畳み掛ける。
それから数分後、敵をなんとか全部倒した。
「……やっと片付いたな。今のうちに進もうぜ」
いつ次の敵が来るか分からないので、武器を構えたまま、皆で走りながら歩を進めていった。






進んでいると、いつのまにか本に囲まれた怪しい部屋に辿り着いた。
「行き止まりかぁ〜…どうすんのこの後?ねぇ色男?」
「俺の事か、ホークアイ」
「他に誰が居るのさ。」
色男などと変なあだ名(?)で言われたデュランが機嫌悪そうにホークアイを睨みつける。まあ言われるのも無理はない…のだが。何せ、未だにこの怖い雰囲気に慣れないアンジェラにひっつかれままなのだ。デュランの放って置けない性格が災いしてか、いつの間にかずっとこの状態だ。
そんな会話を交わしているうち、シャルロットが何かに気がつく。
「ちょっと、リースしゃん来て見て下しゃい。この本がなんか怪しいでち」
「どれどれ…」
シャルロットに言われ、本のタイトルをリースが一つ一つ指でなぞりながら見ていく。
「血の本…死の本…呪の本…だそうです。」
「うわ、縁起悪いでちねぇ…」
うげ、と言った表情でシャルロットがそう言った。この二人のやりとりに気がついてか、ホークアイがリースの隣から本棚を見る。
「へぇ、これがそうか。…これ何?」
ホークアイが適当に手に取ってみる。リースがタイトルを言った。
「それは『死の本』です。」
「うわ気持ち悪ぃ…!」
シャルロットに負けず劣らずのうげ、と言った感じの顔をしてホークアイが言った。そのおかしい表情にリースがクス、と微笑む。
と、次の瞬間。



ガコン!



「え?!な、なんだ?!」
気がつくと隣の何も無かった筈の壁が消え、その奥に更なる部屋が見えた。
「隠し部屋か、厄介な事してくれるじゃねぇか」
どーりで行き止まりの筈だ、と思いながら既にホークアイ・リース・シャルロットが進んだ道を続く。その後ろに、未だぴったりとくっついたままのアンジェラと、少し離れた場所からケヴィンがゆっくり歩きながらついてきた。
そこも得に変わったものはなかったのだが、一つ、テーブルの上にまるで罠で仕掛けられたかのように不自然に置いてある本を見つけた。好奇心旺盛なシャルロットがいち早くそれに気が付き近づいていく。
「なんでちかこれは?…航海日誌?」
「待ってシャルロット!むやみに触っちゃ―――」
アンジェラの叫びも虚しく、シャルロットはそれを手に持ち、開いてしまっていた。
その分厚く、古い本に書かれていたもの。



「死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死」



何処までも続く、終わりの無い「死」の文字が連なる本。
「ぎょええぇぇ!気持ち悪いでち!」
ぽいっ!と思わず本を投げ出し、シャルロットは近くにあったじゅうたんの上に逃げてしまった。
が、後ろに何やら違和感を感じ見上げてみると。
「…こ〜んに〜ちわ〜…。」
「ぎゃあぁぁぁああああ―――!!!!」
なんとそこには、透けている幽霊が立ち尽くしていた!
声にならない叫びを上げてシャルロットはまた逃げ出そうとするが、その幽霊に肩ががしっと掴まれ、シャルロットは身動き出来なくなってしまった。
「ど〜も〜、私幽霊マニアのマタローと申します…とうとう、念願の幽霊になる事が出来ました…十分満喫しましたので、そろそろ帰りますう…」
そのマタローと言う名前を聞いて、デュランはピンときた。
「あ!あんた、バイゼルに居たあの幽霊マニアか!あんたまさかこんな所まで…」
しかし、マタローはデュランに見向きもせず、シャルロットを見たかた思うと、不適に微笑み言う。
「この感動をあなたにも…さようなら〜…」
次の瞬間、マタローは消え、かわりにシャルロットが彼のように体を透けさせている。
「ぎゃ〜!!ななな、なんでちかこれは―――――?!!!」



さてこれからどうなるのか…とりあえず、聖剣の勇者達に幸福再びを願い、合掌。










あとがき。
聖剣伝説3のギャグ小説を書きたい!と思って、やってしまいました幽霊船ネタ(笑
ギャグを目指す為に色々壊れてますが…orz(デュランが剣で制裁加えようとする所とか
それにしても6人も出すと誰かこっか影が薄くなってしょうがありません。アンジェラとかケヴィンとか影薄すぎ(汗
前編では全然CP要素出てきてなくてすみません。後半では…!(どうだか/汗



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