Free timeと子供なキミは



自分の時間と、彼との時間。私はどっちをとるべきだった?





Free timeと子供なキミは





それは、何の変哲もない晴れた日の午後。
仲間達と旅した日々とはうって変わって、今…この孤児院のそばに佇み、白く綺麗になった洗濯物を干している彼女、ヒルダ・ランブリング。まるで天と地の差ともいえるこの環境の変化に稀に戸惑いつつも、今こうして孤児院を立上げ、孤児達の世話をすることにやりがいを感じているのも事実。
そんな日々の中で、今もまだ変わらないものがある。
「おーい、ヒルダー!」
野原の遠くから聞こえた声。それは旅を共にした仲間の一人、ティトレイ・クロウ。旅が終わっても尚、ほとんど週に二、三度は必ずこうして彼と顔を合わせている。
この孤児院が彼の住んでいるペトナジャンカから目と鼻の先ということもあるが、彼は経営の苦しい孤児院を気遣ってか、何度も何度も訪れてくれる。そして、ちょくちょく贈り物と称し、作物やらなんやらと、色々な物資を寄付してくれるのだ。そのうち、孤児達も彼に随分と懐いてしまった。彼特有の、その気のあたりの良い性格も要因にはあるだろうが。
正直、彼のお陰でこの孤児院が助かっている…とも言っていいぐらいの。
そして今日もまた、そんな風にしてティトレイはここに訪ねてきているのだ。
「ヒルダ〜、来てやったぜ〜!」
「あんた毎回思うけど相当暇ね……わざわざこんな所まで来るなんて。」
からかうように異様に元気なこの男に言ってやると、嫌味だとは全く気付かず、それどころか楽しそうに元気な笑いが返ってくる。
「はっはっはー。まあそんないつも暇っつう訳じゃねぇけど、今日は確実に暇だな!」
「は…それ、どういうこと?」
なんだか、嫌な予感がしたのは気のせいだろうか。…そういえば、今日は妙に大荷物のような…
「なんとっ!今日から暫く休暇だから、ここの手伝いをしにやって来たのさ!どうだヒルダ!!」
自慢気にそう高らかに話すこの男、何処までお調子者なのだろう。呆れてものが言えなくなってくる…と、いうかもしやその荷物はお泊りセットではあるまいな?
「あっそ……」
「ひ、ひでぇ!折角ヒルダの為に一生懸命働いて休暇をとったってゆーのになぁ…」
「え…」
その言葉に、不覚にも思わずドキッとしてしまう。
「ま、とにかく暫く此処に置いて貰うからな!つなわけで早速手伝いを…っと」
なにがとにかくなのだろうか、彼はいきなりヒルダの足元の洗濯籠を持ち、ちゃっちゃと物干し竿に洗濯物を干していく。片手だというのにその手際の良さったらないが…しかし、ヒルダにとっては彼の強引な話の進め方と、先程までの台詞に篭るムードすら一切残っていない事が腹立たしくてしょうがない。
「ま、まだ私そんなの許すって言ってないわよ!ティトレイったら!」
ものの数分で山積みだった洗濯物を全て干し終わった彼は、ヒルダのそんな叫びも何処へやら、そそくさと孤児院の中へと先に入っていった。






そんな風にして彼が来た夜。
もう既に世は更けて、早々に孤児達も寝かせ、手伝いの人も帰っていった。そうしてようやく一人の時間を手に入れたヒルダだが、今日はそうではなかった。
「ヒルダ〜、あいつら皆ようやく寝たぜ〜」
「ああ…ありがと…。あんたも寝ていいわよ」
「寝るっつったって…今は九時ぐらいだぜ?まだ寝るのには早いって」
そう言いながらも、彼はふああと欠伸をしている。何せ彼が来てからというものの、家事という家事を隅から隅までやってしまい、ほぼ今日はヒルダやお手伝いさんの出番がなかったほどだ。まあ、家事がなければ孤児達の世話をするからいいのだが。…しかし、彼が来た事に対して孤児達がほっておく筈もなく、ほぼ彼は家事・世話の両方をこなしたといってもいいほどだ。
しかもご丁寧に今日の分や明日の分までの料理も作ってくれたりなんかして、彼は相当疲れている筈。早々に睡眠をとったとして、デメリットは無い筈だ。
「疲れてるんでしょ?早く寝なさい」
まるで親として子をあやす様に言うと、なんだかティトレイは逆にそれが気に喰わないのか、やだね、と言葉が帰ってきた。
「…そう。私はあんたのお陰で今から暇で、久しぶりに本でも読もうと思ってるんだから邪魔しないでよね」
それだけあっさりと口にして、ティトレイに背を向け、椅子に座りながら本を開く。
何故か彼はふてくされたのか異様に静かになって、ただ此方を見据えるだけ。
それすら気にせずにヒルダは一人、目の前の本を読み続けている。
……そんな、無言の時間が数分間過ぎた頃。
ヒルダが読んでいた本が、何故かいきなり手元から消えた。
「?!」
何事か、と思って辺りを見回しても、何もない。ならばと上を見てみると、そこには先程までヒルダが読んでいた本と、そう、それを上に取上げた張本人のティトレイがいた。
いつの間に後ろに来たのだろう、と思いつつも、上に手を挙げ、彼の持つ本の端をぐいっと引っ張る。 「ちょっと、返してよ」
「やだね」
「返して」
「嫌だ」
まるで子供の喧嘩の様に、そんな他愛もないやりとりが続く。暫くして業を煮やしたのか、ヒルダが思い切り叱り付ける様に言ってやろうかとした、時。
「いい加減に返し……きゃっ?!」
欲した本はあっけなく床に落ちて、そのかわりに自分の身は彼に捕らわれた。つまりは、後ろからいきなり抱きつかれた。
いきなりのことに頬が紅潮して、心臓がバクバクと苦しい。
抗議するように体を動かしたり、手で彼の腕を掴んだりと抵抗してみるものの、その暖かで強い腕には敵う筈もない。
「本よりももっと良い暇潰しになることがあるぜ?」
「は?」
いきなり何を言い出すのだろう、この男。
ふざけないでと言おうと口が頭文字の言葉の形になった瞬間、彼の指先がヒルダの耳を掴んだ。
「ひッ!」
その感覚に思わず悲鳴に似た声をあげる。それすら気にせずに彼は耳を弄ぶ。ぐにぐに、と何度も掴んで離し、そしてそれはとてももどかしい感覚となってヒルダの神経を伝う。
「ティト…、レ…ッ」
言葉が最後まで発されないまま、最後の声は彼に塞がれた。
そしてそこで初めてヒルダは彼の真意を確かに悟る。
「まさか…冗談でしょ」
「冗談じゃないぜ」
そう言って、彼は指の腹でヒルダの首筋を這う。その感覚にすらヒルダは身を強張らせて、ぎゅっと目を閉じた。
「あぅっ…、んんっ!」
そしてまたその隙に唇を塞がれて、今度は熱い舌が口内に忍び込んで…隅々までを舐められる感覚に身をよじり、ついには彼の背中へと腕を回してしまう。そしてそれが彼にとって、こちらもやる気になりました、という無言のサインだということを理解していた。
「声、あいつらに聞かれたくないだろ?……行こうぜ」
「………ん…」
朦朧とした表情と声で答えると、そのまま彼に不覚ながらも、ヒルダは身を預けてしまった。






今は何時くらいになるだろう。
時間すら分からなくなるぐらいに、ヒルダは頭の中がぼんやりと混濁していた。
体の隅々が熱くてどうしようもないのに、全身に走る脱力感がどうしても嫌なのに、それでも体の奥が彼を求めて止まない。
体を這う彼の指に身が振るえ、痺れ、そして体中に印を残す彼の唇に、身をよじる。そうしてまた何度も駆け上ったであろう一点に神経が伝っていく。
彼と同化した部分が、まるでそこが心臓になってしまったように、熱かった。
「ふあっ、あっ!いやあっ!」
「くッ…、ヒルダ…」
目の前が真っ白になって、一瞬だけ気を失って、そうしてまた、目が覚める。
目の前には、自分と同じ様にまだ先程の感覚に酔う、ティトレイがいた。
「はぁ…ぁ………、ティト…レイ…」
すぐ近くにいる彼の頬に触れるために腕を伸ばすことすら、今の彼女にとっては体力を要した。
そうしてようやく触れた彼の頬を両手で覆うと、自らへと引き寄せる。汗ばんだ唇が優しく触れて、そこでやっと安心感に似たものに辿り着けた気がした。
それから唇を離し、上体だけを起き上がらせて見詰め合う。
ティトレイが傍にいること、それだけで、ヒルダは幸せだった……のに。
「ヒルダ、もっかい」
「は…?ちょっとまって、もう限界……」
「大丈夫だって」
「大丈夫じゃなっ…、あっ…!」
不意打ちのように敏感な素肌に触れられ、突如また降りかかる感覚に声を上げる。
そう、彼女は忘れていた、彼の体力がどれほど高いものか。 彼の手伝いのお陰で今日温存されていた体力も、この数時間で全てなくなるくらいに、まるで儚いものだったと。
「暇なんだし、いいじゃねーか」
「暇と疲れは全然違うのよっ!」
彼の余裕そうに不適に微笑む姿が、凄く恨めしい。
じたばたと足をばたつかせてみても、細い腕で彼の胸板を叩いてみても、それは一層彼を煽るのだと気付くのはいつ頃になってしまうのだろうか。
抵抗虚しく、今日干されたばかりの癖して、既に太陽の温もりを失ったシーツの上にまた押し倒された。
朝は、いつ来るのだろう。
なんておどけてみたりしても、今日はもうこの大きな子供のおねだりから、離れられないのだろうと思いながら。



明日はどうやら、また洗濯のやり直しらしい。










あとがき。
作品強化期間リクエスト作「R指定、ED後孤児院にて」でした。
久しぶりに描いたらティトレイもヒルダもどんな感じで書けばよかったか分からなくてかなりキツかったです。リバースこまめにやってなきゃ性格に無理がある(汗)。
二人ともおかしな人になっててすみません。つーか、R指定に意識し過ぎて…!(爆)エロ度が訳わかんないんですあわわ。こんなんでいいのかしら…。
えっと、とにもかくにも、リクエスト有難うございました!


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