「今日は皆に、新しい仲間を紹介する」
皆の尊敬する師匠、アデルの突然の宣言に、弟子達であるメイキングキャラ達全員が、きょとんと驚いた表情でアデルに視線を集める。
そして事の流れを理解した瞬間、わあっ、と歓迎の歓喜の声が上がった。
「また新しい奴が来るのか?今度はどんな奴だろうな」
「あんまり大騒ぎしないでよね野蛮人。新しい子が気を使っちゃうでしょ」
当然の如く、期待に胸を膨らませるルーウェンに、ぴしゃりと冷静なクローディアの声が彼を諌める。
「今度もまた若みたいに個性的な人なのかなー?」
「………」
シャルルの遠慮ないストレートな、尚且つ何処か御尤もな意見に、皆肯定の色を隠しきれずに、本人、若こと若狭が、無言で明後日の方向を睨んでいた。
ぎゃいぎゃい、と騒がしく各々が新加入者への想像を膨らませている様に、一度アデルは吐息をつき、もう一度大きく声を張り上げて言った。
「まあまあ、皆落ち着け。…じゃ、早速自己紹介して貰おうか。イヴ、こっちだ!」
アデルの声に誘われて、ひょこり、と彼の後ろから、ちょこんと縮こまった黒髪の少女が顔を出した。
もじもじとせわしなく手を動かしながら、けれど、なんとか深呼吸を繰り返して…。
目線だけを見上げて皆を見据えると、その少女は、あまりに透明で澄んだ声色で、小さく囁くように言葉を紡ぎだす。
「は、は……初めまして。銀河魔法使いの、イヴ、…って、いいます。よ…宜しく、お願いします……」
一瞬の静寂を置いて、一気に皆の拍手喝采が飛び交った。







ンチェルト







「宜しく、イヴ!あたし、盗賊のシャルルって言うんだ!」
「わたしはローラ。アーチャーなの」
早速、新しい仲間に歓迎の自己紹介をしてきた、同じく(?)お子様組に入る二人に、しどろもどろになりながらも、声をかけてくれた事が嬉しいのか、頬を染めながらイヴは答える。
「よ、よ、よ、宜しくお願いします………」
「そ・し・て………こちらが、わたしの愛する麗しのお姉様・マーシェルさんでーっすwww」
「あたいは魔物使いだぞー。よろしくイヴー」
「は、はぁ……」
いきなり、『なんか変わった人だなぁ』という印象を与えて止まない個性的な自己紹介に、思わずイヴの乾いた声が出る。マーシェルもまた遠慮なく、イヴの手を掴んで、ぶんぶんと上下に激しく動く勢いのいい握手をした。
そんなやり取りも早々に、既にアイテム界への入り口前に構えているアデルが、彼女達の方へと声をかける。
「おい、皆、すぐにアイテム界に行くぞ!イヴ、最初はきついかもしれないが、頑張ってついてきてくれよ」
「はっ、はい!」
意気込むように、自分の武器である杖をぎゅうっと握り締め、たたたっとイヴは皆と一緒に初陣へと歩んでいった。



「……えいっ、スター!」
イヴの必死な声と共に、ピシャーン!と電磁波が音を立てて上空から勢いよく落ちる。
ここは所変わって、アイテム界。早速イヴは、ベースパネルから出て、目の前の敵に立ち向かっていた。
さきのスターが、なんとか命中はしたものの、敵のゾンビは、まだレベルの低く、戦闘経験の無いイヴの一発でそうやすやすと倒される事はなく、寧ろ逆にイヴの方へと襲い掛かってくる。
「ふわっ…?!あ、あ、あっ…」
慌てて逃げようとして、つんっと自分の長いスカートを踏んで蹴躓き、隣のイライザにドンッ!とぶつかってしまう。
「き、き、きゃあぁっ!!」
「烈風のじゅ……つぅぅぅ?!!」
その勢いでイライザの烈風の術(メガウインド)の標的がズレてしまい、敵の丁度隣にあったジオシンボルにヒット。簡単に破壊されてしまったジオシンボルは一気に色変化を始め、ゲートを目指すべく先に行っていたヴァジーの足元を直撃する。
「に、にん?!」
バスッ!と音を立てて、ヴァジーにダメージが襲い掛かる。
「ヴァジー殿っ!!」
「ああっ…ご、ご、ごめんなさい…!」
いきなり、仲間に怪我をさせてしまった事に、思わずイヴの目が涙が溜まる。
「にん…、気にする事はないでござる。この位平気でござる」
「で、でも…イヴは…」
「……にん、それよりも背後に敵がまだ…」
「え?」
ヴァジーに指摘され、イヴが振り向いた瞬間、そこには先程仕留め損ねたゾンビが、イヴに向かってその腐りかけた腕を振り下ろそうとしていた。
「ヴぁ、ヴァジー殿っ!そういうことは先に言うでござる!!」
「す、すまんでござる……にん」
「は、はわぁっ!」
「い、イヴ殿―――!!」
イライザの声が聞こえたが、もう恐怖で何が何だか分からない。咄嗟に持っていた杖を振り回すが、使い慣れないその武器はすっぽーん!とイヴの手から離れ、丁度良くベースパネルの中へと吸い込まれるように入っていった。
次の瞬間、ゴツンッ!!と鈍い音がし、中が一気にぎゃーわーと悲鳴や喚声で騒がしくなり出した。
「烈風の術ッ!…ふう、これでゾンビは始末したでござるが…な、中は大丈夫でござるか…?」
「あ、あ、あああああ………」
因みにヴァジーが漸く辿り着いたと同時に、ベースパネルに戻った三人は、見事に大きなタンコブを作ってぶっ倒れ、クローディアの呆れた看護を受けている、苦労人戦士ルーウェンの姿が垣間見られたそうな。
「……師匠…ご臨終でござる」
「にん」
「って、コラー!!俺はまだ死んでねぇぇぇ―――!!!」






「はぁ……早速、皆に迷惑かけちゃうなんて………」
イヴは一人、ホルルト村の外れの原っぱに、両足を抱えて座り込んでいた。
アイテム界からなんとか帰ってこれたものの、度重なる失敗で、皆の足を引っ張りまくってしまった。何人に怪我をさせ何人にフォローと言う名の後始末をして貰ったか覚えていられない程だ。
「これでも、頑張ってるつもりなんだけど…やっぱり、戦いなんか向いてないのかな……」
もしもこんな時、相談できる人がいたら良いのかもしれないけれど。まだ馴染めないこの集団にはそんな話を出来る人もいなく、即話しかけてくれたシャルルとローラも、相手(?)の閃光という侍や、麗しいお姉様マーシェルと戯れていて、なんだか相談するにも忍びない。更には、魔物から転生した自分は、皆とは違って、信頼できる師匠すら持っていなかったのだ。結局誰にもこの不安な想いを打ち明ける事は出来ず、イヴは一人で思い悩むしか出来ずにいた。
思わず、深い溜息をついて、イヴは顔を埋めるようにして俯く。
じわり、と思わず緩い涙腺から涙が溢れそうになり、必死で嗚咽を押し殺す。
「イヴはっ…早く、皆みたいに、強くなりたいのに…!ひっく、皆…っに、っく、迷惑なんか、かけたく、ないのにぃっ…!!」
堪えきれずに溢れ出た涙を、服の袖で必死に拭い取っても足りず、ぼろぼろと次から次へと大きな雫は原っぱの上に点々と落ちていく。
「ひっくっ…ぐすっ、うっ……うぅっ……」
そうしていると、いきなり、ポン、と後ろから誰かに優しく肩を叩かれた。
「……?!」
いきなりの事に驚きながら、バッと振り向くと、そこには大きく深い帽子を被った男の人がいた。
「よぉ、お前確かイヴって言ったっけ?」
「あ、あなたは…?」
「俺はスメタナ。しがないガンナーさ」
イヴに話しかけてきたのは、この集団で『作曲者』という意味不明なあだ名で名高い、ガンナーのスメタナだった。
しかしどうして、彼がこんな村の外れに来ているのだろう。当然の如く抱いているイヴの疑問に、スメタナは、遠慮なく横に、よっと、と座り込みながら答える。
「ここさ、俺がよく来てる所なんだよな。特等席ってやつか?で、習慣的に今日も来てみたら、先客が居たんで、正直俺の方が吃驚してたとこだ」
「……そ、そうだったんですか…ご、ごめんなさい……」
「いや、いいって。それに、なんだかお前、泣いてたみたいだったし」
「……や、やっぱり、気付い、て……」
指摘され、先程彼の登場で驚いて引っ込んだ筈の涙が、思わずまた溢れそうになる。ぶわ、と込み上げるものに気付いたのか、おわっ、とスメタナが慌てだす。
「お、おい、泣くなよ。俺が泣かせたみたいだろ」
「ふ、ふえぇ…ご、ごめんなさい……」
「………、ハァ…、お前アレだろ。さっきの戦闘で、皆に迷惑かけた事気にしてるんだろ?」
「は、い……」
「だったら気にすんな。皆あれくらいでお前の事敬遠するような奴らじゃない。…それに、そんなすぐ役立った奴なんか早々居なかったぜ?……まあ、カロンや若は別としてだな、俺だって最初は…いや今も現在進行形でえらい目に合ってだなぁ……」
自分の話になった瞬間、自分に勝らずとも劣らない落ち込みオーラを醸し出した彼に、思わずイヴが目を瞬かせる。
「……兎に角、焦らなくてもいいからさ。魔法とかならウィルやディオナもいるから、気軽に教えて貰えばいい。まぁ、俺は単なる銃使いなんで、お前には何も教えられないだろうが……。皆、お前のことちゃんと受け入れてくれっから、心配すんな。そんで、皆と一緒に、ゆっくり強くなっていこうぜ?」
「………!」
深く被った帽子とマントで、彼の表情はよくは見えなかったが、確かに優しく微笑んだスメタナの笑顔と暖かい言葉に、ハッとイヴは胸を打たれる。
胸の奥に、さっきまであった辛く痛いものは不思議と溶け、変わりにまだ頑張れるような自信が満ち溢れてくる。
「………あ、有難う、ございます…スメタナさん。イヴは…頑張ります…!」
「その意気だな、頑張れ、イヴ」
目つきの悪い目を、にっこりと微笑ませながらスメタナはそう言い残し、ぐりぐりとイヴの頭を撫でてやりながら立ち上がると、そのまままたホルルト村の方へと戻っていってしまった。
「……あ。ま、まだ……お礼、言えてなかった、のに…イヴのばか…」
自分の事なんかにわざわざ気を止めて、慰めてくれた彼に、お礼を言い忘れたのに気付いて、トロい自分に、またイヴは思わず卑下になる。
でも―――、自分が嫌いな想いよりも、強く強く、尚且つ暖かい感情が、イヴの心の中を取り巻いていた。
「………スメタナさん…」
彼の名を、もう一度囁くように言いながら、ぽっ、とイヴは自らの頬を淡い桜色に染めた。




後日。イヴは、とても勇ましく引き締まった表情で、師のような存在であるアデルの元にあった。
「? イヴ、どうした?」
「……アデルさん、あの…、お願いがあるんです」
「なんだ、言ってみてくれ」
「………イヴは……、杖じゃなくて、別の武器に…したいんです」
「杖を止めるのか?じゃあ、今度は何を使うんだ?」
アデルの問いに、すぅっと大きく息を吸い――、一呼吸置いて、ぐっと真っ直ぐ前を見据えながら、イヴははっきりとした声で宣言する。


「銃を、使いたいんです」


自分を勇気付けてくれた、あの人のような銃使いに、自分もなりたいんだ。
まだまだ、強くなるまでは時間がかかるかもしれないけれど――――それでも、いつかあの人と対等になれるように。
だからどうか、これが自分の勝手な想いだとしても…、イヴが、あなたの事を想うのを許してください。

イヴは、あなたの事が好きです……スメタナさん……






「はーっくしっ!」
「お、どうした作曲者?風邪か?」
「俺を作曲者って呼ぶんじゃねーー!!」
閃光の素の言葉に、スメタナがガーッと声を荒げて叫ぶ。
スメタナの反論をナイススルーして、閃光は話を逸らそうと、ふと気になっていたことを問い詰める。
「…そういえば作曲者。こないだ、あの新入りの銀河魔法使いを慰めたそうじゃないか?」
「だから作曲者じゃねって……あぁ、それな。なんか落ち込んでるあいつの背中見てたら、自分の事のように思えてきちまってな…。自分に自信が持てないでいるのに、似たような境遇を感じたっていうか?…それで、どーにもほっとけなくなって…、つい…」
「襲ったのか?」
「お前と一緒にすんなドS侍が――!!!」
しみじみと感傷に浸りながら話していた所が一転、閃光の真顔の爆弾発言に、再び作曲者の怒号が響き渡る。
一時のこの気紛れの善い行いが、まさか彼の初めての春の到来を呼ぶ事になるとは、この不幸な作曲者は、まだ夢にも思っていなかった。彼がこの奇跡に気付くのは、まだまだ先のことである。
やっぱり彼は、誰もが認める、不幸な不幸なお人であった。










あとがき。
作曲者こと、不幸ガンナースメタナ×新米銀河魔法使いイヴちゃんのお話でした〜!!いやー…、最近他サイト様や仲良しの人などに感化され、ついに実現させてしまったスメタナ愛の手が伸ばされる瞬間(笑)。ドクロ×魔法使いもいいんだけど、ガンナー×魔法使いも結構美味しいですね〜w
因みに、スメタナがまともに喋ったのって今回が始めてのような…。性格全然分からなくて困惑しました…(汗)。しかもスメタナ誰と仲良いのか分からなくて(皆に茶化されてるから・爆)結局ナイスにスメタナに暴言吐いてくれる閃光に…。ごめんよスメタナ。やっぱり私君を不幸にしたかった。(オイ
宜しければ、スメタナとイヴちゃんの事応援してやって下さると幸いです〜。さて春の到来に気付くのか、作曲者?!(え)
それでは、ここまで読んでくださって有難うございました〜。



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